火力発電の石炭灰を復興用の盛土に、福島県で6月から製造開始電力供給サービス

東北電力は石炭火力で日本最大級の発電設備を運転する「原町火力発電所」に、石炭灰から土を製造する装置を導入する。復興で必要な盛土の材料に使えるように、6月から製造を開始して、8月中に販売を始める予定だ。年間50万トンにのぼる灰の1割を盛土の材料に利用する。

» 2014年05月29日 07時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 福島県の南相馬市にある「原町火力発電所」は太平洋沿岸に立地していて、東日本大震災で津波による甚大な被害を受けた。約2年間かけて復旧してからは、地域の木質バイオマスを燃料の一部に利用するなど、復興に向けた取り組みを続けている。新たに石炭火力発電で生じる大量の灰を復興の盛土として活用するため、灰から土を製造する装置を導入する(図1)。

図1 「原町火力発電所」の石炭灰混合材料の製造予定地。出典:東北電力

 原町火力発電所には日本で最大級の出力100万kWを発揮する石炭火力発電設備が2基稼働している。石炭を燃焼させた後に発生する灰の量は年間50万トンに達する。通常は地中などに埋めて処分するが、灰の中でも微粉末の「フライアッシュ」は土に転換することができる。

 東北電力はフライアッシュにセメントと水を混合して固形物を作ることによって、復興に必要な盛土の材料に使えることを確認した。発生する灰の1割に相当する年間5万トンのフライアッシュを利用すると、容量にして6万立方メートルの盛土を製造することができる。

 発電所の構内に石炭灰とセメントを貯蔵するサイロを建設して、水と混合するための装置を導入する(図2)。混合した固形物は養生の工程を経てから粉砕して、盛土材として流通させることが可能になる。

図2 石炭灰混合材料の製造・流通工程。出典:東北電力

 東北電力は6月から石炭灰混合材料の製造を開始して、8月からグループ企業を通じて盛土用に販売する予定だ。発電所と地域を結び付ける絆になるように、販売する石炭灰混合材料の製品名を「輝砂(きずな)」に決めた。盛土材の需要動向を見極めながら製造を続けていく。

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