LED化の費用を最小にするには? 秦野市の場合LED照明

神奈川県にある秦野市防犯協会は、市内の防犯灯約1万3000灯に対するESCO事業を進める。目的は2015年4月までに全てをLED化すること、さらに費用負担なくLED化することだ。

» 2014年07月07日 12時20分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
図1 神奈川県秦野市の位置

 地域にある防犯灯を全てLEDに置き換え、光熱費や二酸化炭素排出量を削減する。置き換えに対する自治体の財政負担はない。このような取り組みを神奈川県秦野市が進めている。

 秦野市の事例では、市が資金を100%補助する任意団体である秦野市防犯協会が1万2890灯の防犯灯を維持管理している。1カ月ごとに管理台帳を更新し、電力契約を把握し、料金を支払う。防犯灯が故障したときは交換する。新設もする。こうしたなか、LED化を進めようとしても規模が大きく、難しい。膨大な交換費用をどの程度抑えられるか、見通しにくい。2014年6月時点でLED化できた防犯灯は635灯だけだ。

 そこでESCO(Energy Service Company)事業*1)を利用する。防犯灯のLED化に関する包括的なサービスをESCO事業者が提供する形だ。既存の防犯灯の調査やLED防犯灯の設計、施工の他、導入した設備の保守や運転管理、消費電力の測定、さらには事業資金調達もESCO業者が取り組む。

*1) ESCO事業には2種類の契約形態がある。秦野市ではシェアード・セイビングス方式を結ぶ。この契約ではESCO事業者が省エネルギー化に関する回収費用を負担する。ギャランティード・セイビングス契約では施設の所有者がこの費用を負担する。

 ESCO事業者の収入は、秦野市防犯協会からのESCOサービス料(委託料)と、LED化による光熱費削減分である。ここから交換費用と維持管理費用を支払った残りが事業者の利益となる。秦野市防犯協会は新たな費用負担なくLED化を実現でき、毎年の管理にかかる費用も減る。委託料を従来の管理費用よりも低く設定するからだ。こうして、ESCO事業者、秦野市防犯協会のどちらにも利益が生じる。今回のESCO事業ではプロポーザル方式で事業者を選定するため、契約締結以降に契約金額が明らかになる形だ。

どのようなESCO事業なのか

 秦野市防犯協会が管理している防犯灯は、97%以上が20W蛍光灯だ。1万1955灯ある。これをESCO事業によって、消費電力10W以下のLED防犯灯に付け替える。この他、42W蛍光灯が135灯、40W水銀灯が87灯、80W水銀灯が59灯あり、いずれも消費電力20W以下のLED防犯灯と交換する*2)。今後1年ごとに新設される防犯灯を約50灯としており、全てLED防犯灯にする。これもESCO事業に含まれる。

*2) これ以外の出力の防犯灯が19灯あり、消費電力10Wまたは20WのLED防犯灯と交換する。全ての防犯灯は直下4.5mで初期照度7lx(ルクス)以上、寿命6万時間(初期光束の70%まで減衰)を満たす。防犯灯として使うため、周囲が暗い間だけ点灯する自動点滅器を付ける。

 2014年7月下旬までにプロポーザル方式で事業者(優秀交渉権者)を選定し、同9月下旬にESCO契約を締結。同10月から2015年1月を工期とし、2015年4月に運用を開始する予定だ。

 契約期間は10年間。提案通りの光熱費削減ができない場合はその分を事業者が保証しなければならない(パフォーマンス契約)。10年後は秦野市防犯協会に防犯灯の所有権を移転する契約だ。

 なお、神奈川県では秦野市の他にも、小田原市や開成町、葉山町、湯河原町、横浜市などで街灯(防犯灯)のLED化を進めており、全てESCO事業を利用している。横浜市の場合は計画開始時に対象となる防犯灯が約12万灯あり、規模が大きい。

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