LED照明を初期投資なしで導入、5年リースで経費を回収するプランスマートショップ

神奈川県が事業者の省エネ対策を支援するために、LED照明を初期投資なしで導入するプランを県内5カ所で実証試験した。その結果3カ所では5年リースの期間中に電気料金を削減して経費を回収可能なことが確認できた。残る2カ所はLED照明による消費電力の削減量が想定よりも少なかった。

» 2014年04月11日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 実証試験の対象に選ばれたのは神奈川県内の宿泊施設2カ所のほか、屋内プール施設、公益社団法人と社会福祉施設を含む合計5カ所である。このうち社会福祉施設だけは6年リースを採用し、そのほかの4カ所は5年リースでLED照明を導入した。

 各施設でLED照明を導入する前と後の4日間ずつ、分電盤から時間帯別の電力使用量を計測して削減量を算出した。それをもとにリース期間中の電気料金の削減額を計算して、リース料金との差額を比較する試験である。

 5カ所の中で効果が最も大きかったのは、湯河原町の宿泊施設だった。40W型の照明100本を蛍光灯からLEDに切り替えて効果を測定した結果(図1)、約4.6年で電気料金の削減額がリース料金を上回ることを確認できた。

図1 宿泊施設に導入したLED照明。出典:神奈川県環境農政局

 1日あたりに削減できる電力量は約40kWhで、リース期間中の5年間の累計では7万kWhを超える(図2)。この宿泊施設が東京電力と契約している「業務用季節別時間帯別電力2」の単価をもとに電気料金の削減額を計算すると、年間で約25万円、5年間では127万円になる(図3)。さらに蛍光灯の場合に必要になる交換費用を含めると、5年間の削減額は合計132万円を見込める。

図2  LED照明の点灯時間と削減電力量。出典:神奈川県環境農政局
図3 電気料金などの削減額。出典:神奈川県環境農政局

 これに対してリース料金は月額2万円強で、5年間の累計では121万円になる。差し引き11万円のコストダウンを図ることができる。リース期間が終了した後は無償で照明機器の譲渡を受けられる契約になっていて、LED照明が故障するまで電気料金の削減効果を享受し続けることが可能だ。

 このほかの4カ所の試験結果を見ると、もう1つの宿泊施設が4.9年、屋内プール施設が4.8年で、いずれもリース期間中に経費を回収できる。一方で公益社団法人の場合には回収までに6.3年かかることになり、リース期間を大幅に超えた。社会福祉施設だけは6年リースだが、その1.5倍以上の9.4年もかかる結果になった。

 リース期間中に経費を回収できない2カ所の施設では、蛍光灯の消費電力を1本あたり50Wと見込んでいたのに対して実測値は40W程度と少なく、LED照明による電力の削減量が想定を大きく下回った。社会福祉施設では照明の平均点灯時間が11時間弱と短いことも影響した。

 神奈川県は実証試験の結果をもとに、リース方式でLED照明を導入するのに適している事業者の条件をまとめた。電力会社と高圧の業務用電力を契約していて、照明の本数が50本以上あって、点灯時間が12時間以上になる事務所や商業施設などである。

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