電気自動車を使って年間に31万円の光熱費を削減、3年間の実証結果でスマートハウス

2011年から奈良県で始まったスマートハウスの居住実験で、燃料電池と太陽電池、さらに蓄電池か電気自動車を組み合わせた「3電池住宅」の導入効果がまとまった。家族4人が生活した結果、電気自動車を利用した場合でも年間の電力購入量は82%削減できて、光熱費は31万円も少なくなった。

» 2014年07月16日 15時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]
図1 居住実験住宅。出典:大阪ガス、積水ハウス

 大阪ガスと積水ハウスが2011年2月から2014年5月の3年強にわたって、奈良県の北葛城郡で「スマートエネルギーハウス」の居住実験を実施した(図1)。

 軽量鉄骨造りの2階建て住宅で、延床面積139平方メートルの住居に父・母・子2人の4人家族が実際に生活して、省エネ性のほかに快適性も検証する試みである。

 検証結果によると、住宅に設置した燃料電池の「エネファーム」を最大限に活用する制御方法を利用することで、年間の電力購入量が82%も削減する。一方でHEMS(家庭向けエネルギー管理システム)による省エネのアドバイスなどは効果が続かず、居住者に手間のかからない空調の自動制御などが受け入れられることもわかった。

 居住実験に利用したスマートハウスには発電能力が0.7kWのエネファームのほか、屋根には5kWの太陽電池、さらに蓄電容量が3.5kWhのリチウムイオン蓄電池を設置した(図2)。いわゆる「3電池住宅」である。ガソリン車の代わりに電気自動車を使った期間には、蓄電池の機能を電気自動車で代用した。

図2 スマートハウスの主な設備。出典:大阪ガス、積水ハウス

 ガソリン車を利用した2012年2月〜2013年1月の1年間では、3電池住宅の電力購入量は3電池のない住宅と比べて年間の電力購入量が90%も削減できた(図3)。光熱費も太陽光発電の売電収入を含めるとマイナス11万4000円になり、30万円ほど少なくて済んだ。続いて電気自動車を利用した2013年6月〜2014年5月の1年間では、電力購入量は82%少なくなり、自動車の燃料費と光熱費を合わせて31万円も安くなった。

図3 CO2排出量や光熱費の削減効果。出典:大阪ガス、積水ハウス

 スマートハウスにはHEMSに加えて、床暖房や乾燥剤を使って除湿するデシカント換気システム、さらに電動シャッターや電動カーテンも装備した。特にHEMSを使って電動シャッターと電動カーテンを自動制御することで、省エネ性と快適性の両面で効果が大きいことが明らかになった。

 HEMSが提供する情報の中では、天気や交通などの生活関連情報が良く見られる一方、居住者に省エネ行動を促すアドバイスは継続して見てもらうことができなかった。エネルギーの使用量を単純に表示するだけのグラフでは効果がないことも判明した。発電設備ごとの内訳や電気自動車の走行可能距離のように、居住者を直感的に省エネ行動に誘導する情報が効果的だった(図4)。

図4 リビングルームに設置したHEMS端末(左)と画面例(右)。出典:大阪ガス、積水ハウス

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