パワコン不要の太陽光、「交流」でつなぐ蓄電池蓄電・発電機器(2/2 ページ)

» 2014年10月28日 07時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]
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次は蓄電池をマイクロインバーターでつなぐ

 こうした状況の中、マイクロインバーターの考え方を蓄電池にまで拡張しようとしている企業がある。米Enphase Energyだ。同社はマイクロインバーターを採用した太陽電池モジュールを、「双方向」マイクロインバーターを用いた蓄電池と組み合わせる(図2)。双方向とあるのは、蓄電池には充電と放電の逆向きの電流の流れがあるからだ。同社が世界で初めて開発した技術であると主張する。双方向マイクロインバーターを備えた蓄電池を「Enphase AC Battery」と呼ぶ。

 マイクロインバーターの利点は太陽電池モジュールと同じだ。工事が容易であり、必要に応じて蓄電池を増設しやすい。

 同社は2015年下期にも図2のようなシステムを市場に投入する予定である。全てを交流で接続する「オールACアプローチ」を採る。マイクロインバーターを備えた太陽電池モジュールと、双方向マイクロインバーター、蓄電池をパッケージ化した「分散型電力貯蔵システム」として提供することで、住宅内のエネルギーマネジメントを最適化できるという。制御にはEnphase Energy Management Systemを利用する。

 「図2にある運転制御盤は、太陽電池モジュールと蓄電池の状態を監視して制御する機能を備える」(エリーパワー)。

図2 分散型電力貯蔵システムの構成 家電を含め、機器同士を交流(ACケーブル)で接続する。 出典:エリーパワー

エリーパワーが蓄電池を単独供給

 Enphase Energyはマイクロインバーターの開発・製造・販売に強みのある企業だ。だが、蓄電池技術はない。そこで、日本で蓄電池を開発・製造・販売するエリーパワーと戦略的提携の覚書を締結した。長期的かつグローバルな提携である。「覚書の詳細な内容は公表できないものの、例えば1年という短期間ではない。Enphase Energyは世界市場に販売網を構築しているため、当社の蓄電池がそこに載っていく」(エリーパワー)。

 エリーパワーは容量1.2kWhのリチウムイオン蓄電池モジュールをEnphase Energyに単独供給する*2)。「新規開発品ではなく、当社が既に量産しているリチウムイオン蓄電池セルを組み合わせて供給する。国内では4セルを1モジュールに組み上げているものの、Enphase Energy向けには8セルを使う」(エリーパワー)。Enphase Energyによれば蓄電池からの出力は275Wもしくは550Wになるという。

*2) エリーパワーの発表資料にはEnphase Energyの共同創業者で副社長のRaghu Belur氏のコメントが掲載されている。そこではエリーパワーと提携を結んだ理由として次のようにある。リン酸鉄リチウムを正極材に使用しており、安全性と性能に最も優れており、長寿命であること。蓄電池を高い品質基準の全自動ラインで製造していることが挙げられている。

 「図2には4枚の太陽電池モジュールと4個の蓄電池が組みになって描かれているものの、実際のシステムでは太陽電池モジュールと蓄電池の数は1対1ではない。米国市場では4〜5枚の太陽電池モジュールと3〜5台の蓄電池を組み合わせることが一般的だろう。太陽電池モジュールを1枚増設したとき、蓄電池の数はそのままでよいことも多い」(エリーパワー)。

 日本市場に分散型電力貯蔵システムが導入されるのはいつなのだろうか。エリーパワーの発表資料には、同社社長の吉田博一氏のコメントとして「分散型電力貯蔵システムは米国のみならず、日本を含めた世界のエネルギー問題の解決に貢献していくものと確信しています」という発言が掲載されている。

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