電気料金の再値上げを決めた関西電力、原子力に依存する脆弱な事業構造電力供給サービス

北海道電力に続いて関西電力が再度の料金値上げに踏み切る。原子力発電所の再稼働が遅れて、火力発電の燃料費が増加していることを理由に挙げる。しかし実際には販売量が大幅に減少した結果、売上が想定どおりに伸びていない影響が大きい。再値上げで収益を十分に改善できるかは疑問だ。

» 2014年12月17日 16時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 関西電力は電気料金の値上げ準備に入ったことを公表した。早ければ年内にも国に申請書を提出して、2015年4月に値上げを実施する見通しである。前回の2013年5月から2年も経たずに再度の値上げに踏み切ることになるが、計画どおりに収益を改善するのは難しい状況にある。

 というのも前回の値上げ以降、関西電力の販売量は全国平均を上回る減少率を続けている。2014年度の上半期(4〜9月)には前年度から4.8%も減って、四国・九州の2社とともに減少傾向が目立つ(図1)。再値上げによって需要がいっそう低下することは確実で、値上げ後の2015年度も売上が大幅に伸びることは期待しにくい。

図1  電力会社10社の2014年度上半期の業績(連結決算)

 関西電力の収支構造を見ると実際の状況がわかる。2014年度の上半期は値上げによる売上増が390億円だったのに対して、販売量の減少に伴う売上減が630億円にのぼった(図2)。一方で火力発電の燃料費は530億円増えているが、それと同じ額を燃料費調整分で利用者から徴収している。その結果で、経常利益は前年度から557億円も悪化して赤字に転落した。

図2  関西電力の収支構造(2014年度と2013年度の上半期、単独決算)。出典:関西電力

 関西電力は原子力発電所を再稼働できる時期にめどが立っていないことを再値上げの理由に挙げている。しかし現実には販売量の低下による売上の減少が収益に大きく影響しているわけで、再値上げを実施すればさらに販売量は減っていく。

 現在の全国の電気料金を地域別に比較すると、東日本が高くて西日本が低い傾向にある(図3)。ただし西日本の中では関西が最も高い水準にあり、再度の値上げによって周辺地域と比べた割高感は増幅する。料金の安い新電力に移行する企業や自治体が増えることは確実である。

図3  電力会社10社の業務用電力の料金(2014年11月時点)

 結局のところ、収益を改善するためには原子力発電所の再稼働に望みをつなぐしかない。再稼働すれば一時的に燃料費が減少して、販売量の低下による売上の減少分をカバーできる。とはいえ原子力発電所にトラブルが発生すれば、安全性を重視して運転再開までに長期間を要することになる。

 2016年度からは小売の全面自由化によって、市場規模の大きい東京や関西では価格競争が激化する。原子力による電力を敬遠する一般の利用者も多く、新電力へ移行する動きは活発になっていく。電力会社が原子力に依存する事業構造を続ける限り、安定した収益を長期にわたって見込むことは難しい情勢だ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.