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» 2015年03月11日 14時30分 UPDATE

蓄電・発電機器:出力劣化を防ぐ「膜」、設置済み太陽電池も狙う

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、太陽電池モジュールの表面に被膜を形成することで、水分などの侵入を防ぐ技術開発を2件採択した。発電量の低下を抑えて40年間の利用が可能になる、大幅な性能低下を招くPID現象の発生を防ぐといった効果を期待できるとした。

[畑陽一郎,スマートジャパン]

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、太陽光発電システムの周辺機器や維持管理の技術開発を2件採択した。目的は太陽電池モジュールの劣化を防ぎ、寿命を延ばして生涯発電量を増やすことだ。

 「いずれの開発も、新製品だけではなく、既に設置済みの太陽電池モジュールへ適用できるかどうか検証する」(NEDO新エネルギー部)。

バックシートを「補強する」

 ジー・エム・ジーエコエナジーとの共同研究のテーマは「PVモジュールの防水処理による太陽光発電システムの効率向上」。

 一般的な太陽電池モジュールの構造を図1の左上に示した。太陽光は図上方から入射する。表面の強化白板ガラスと裏面の樹脂製バックシートの間に、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合樹脂)で囲まれた(封止された)太陽電池セルや電極が固定されている。裏面保護樹脂であるバックシートは水分の侵入も防ぐ。

 しかしながら、10年単位の時間が経過すると、十分には水分の侵入を防ぐことができない。そこで、図1左下のようにバックシートの外側にさらに防水被膜処理を施す。

 図1右の折れ線グラフは防水被膜処理の想定効果だ。被膜がない場合を空色、被膜がある場合を赤色で示す。100%の状態から使用を開始し、20年経過するとそれぞれの出力は10ポイント程度変わると想定。防水被膜がある場合は40年後も80%以上の出力が期待できそうだ。

yh20150311NEDO1_590px.png 図1 防水処理の内容(左)とその効果(右) 出典:NEDO

PID防止効果を狙う

 MORESCOとの共同研究のテーマは「太陽電池の抗PIDコート材料の開発」。図1では裏面のバックシートに防水被膜を作ることに対し、この研究ではバックシート以外の部分にコート材料を付ける(図2)。

 コート材料は耐水性に優れており、透明で、撥水性がある*1)。これにより、PID(Potential Induced Degradation)現象を防ぐことが目的だ。PIDとは高電圧のシステムなどでモジュール回路内に電流の漏れなどが発生し、出力が大幅に低下する現象をいう。所内の直流電流が例えば1000Vであり、高温多湿の条件下にあるメガソーラーで発生しやすい。

 コート材料によってPID現象を確実に防ぐことが可能だというデータは存在しないため、先ほどの共同研究よりも、より基礎研究寄りの内容だと考えられる。

*1) はっ水性の向上によって、太陽電池モジュール表面に付着する「ちり」が減り、出力が高まるという副次的な効果も期待できそうだ。ただし、主目的はPIDを防ぐことにある。

yh20150311NEDO2_590px.png 図2 PIDフリーコート材処理の内容(左)とはっ水効果(右) 出典:NEDO

8つの研究開発がそろう

 NEDOは2014年9月に「太陽光発電開発戦略」を発表している。その中の大きなテーマが発電コストを既存電源並みに引き下げることだ。NEDOによれば発電コスト低減には3つのカギがある。太陽電池の変換効率とシステムの設備利用率、システムの運転年数(寿命)だ(関連記事)。基幹電源発電コスト並みの7円/kWhという発電コストを実現するには、モジュール変換効率25%以上、設備利用率15%、運転年数30年が必要だ。

 戦略を発表する直前の2014年7月には、平成26年度「太陽光発電システム効率向上・維持管理技術開発プロジェクト」について6件の採択先を決定している(関連記事*2)。いずれも太陽電池モジュール以外の周辺機器(BOS)の改良により、システム全体の性能や寿命を高めたり、不具合をより容易に見つけ出すための開発だ。

 今回の2件は、この6件と同じプロジェクトに属している。太陽電池モジュールが対象となっているとはいえ、モジュールの表面を改善する形だ。BOSの改良によってシステム性能を高めるという目的は変わらない。

*2) 次世代長寿命・高効率パワーコンディショナの開発(太陽光発電技術研究組合)、低価格角度可変式架台の開発による積雪時の発電効率向上(ケミトックス)、次世代長寿命・高効率ACモジュールの開発(太陽光発電技術研究組合)、太陽光反射布を用いたソーラーシェアリング発電所システム効率向上の研究開発(フォーハーフ)、新規不具合検出機能を備えた発電量/設備健全性モニタリングシステムの開発(ネクストエナジー・アンド・リソース)、HEMSを用いたPV発電電力量の遠隔自動診断と故障部位把握方法の開発(セラソーラーコーポレーション)。

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