釜石市沖が海洋再生エネの実証海域に、地域産業との連携で復興を促進自然エネルギー

岩手県釜石市の沖合が、日本政府が海洋再生可能エネルギーに向けて公募を行っていた実証実験海域に決定した。波力発電や浮体式洋上風力発電の研究開発を進め、さらに地域産業と連携しながら同市の新たな産業として海洋エネルギー産業の創出を目指す。

» 2015年04月09日 09時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 周囲を海に囲まれた日本にとって、海洋エネルギーの活用は再生可能エネルギーの導入促進に対し大きな鍵を握る。日本政府は、2013年に内閣官房に「総合海洋政策本部」を設置し、洋上風力、波力、潮流、海洋温度差、海流の5つの分野で海洋エネルギーの活用に向けた実証実験を行うことを発表している(関連記事)。

 こうした海洋再生エネルギーの活用に向けた実証実験を行うためには、最適な海域の確保が必要になる。そこで総合海洋政策本部は、2013年から全国の都道府県に対して候補海域の公募を行っていた。岩手県もこれに応募していた県の1つで、2014年2月に釜石市の尾崎半島沖を候補地として提出。2014年7月には、企業や大学といった「実証実験を行う利用者の見込みが不確定」として選定が一度先送りされたが、2015年4月3日に正式に実証実験区域として追加採択されることが決まった(図1)。波力発電と浮体式洋上風力発電の実証実験に利用される予定だ。

図1 赤線で囲まれた部分が実証実験区域に選ばれたポイント 出典:総合海洋政策本部
図2 リニア式の海洋発電システム 出典:NEDO

 一度選定が見送られた釜石沖が追加採択された背景には、釜石・大槌地域産業育成センターなどが提案した次世代海洋発電システムの開発プロジェクトが、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の事業に採択され、利用者にめどが立ったという経緯がある。同プロジェクトは、釜石・大槌地域産業育成センターを中心に、地元企業や東京大学、東北大学など産学連携の体制で、波力を利用するリニア式の海洋発電システムの開発に取り組むというものだ。

 岩手県は、2011年3月に起きた東日本大震災からの復興計画の1つとして、海洋再生可能エネルギーの活用に向けた取り組みを掲げている。また釜石市も同震災以降、将来的に再生可能エネルギーを活用したスマートコミュニティの実現に向けた方針を示している(関連記事)。この方針に基づき、釜石市が同市内における再生可能エネルギーの利用可能量を調査した結果、最も多い陸上風力発電に次ぎ、2番目が洋上風力発電となっている(図3)。

図3 釜石市が調査した同市内における再生可能エネルギーの利用可能量 出典:釜石市

 釜石市の沿岸部には、港湾などのインフラの他、造船や海洋土木などの関連企業が集積している地域でもある。同市はこうした地域産業と、釜石沖が海洋再生可能エネルギーの実証実験区域に採択されたことでスタートする研究開発プロジェクトとの連携を狙う。これにより、釜石市の新たな産業として海洋エネルギー産業を創出していきたい考えだ。

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