自然エネルギー関連事業については、メガソーラーや蓄電システム、陸上風力と洋上風力、ウィンドファーム制御や変電などの領域に取り組む。
太陽光発電システムではセンサーレスのクラウド型パネル故障診断サービスや24時間遠隔監視サービスなどを展開する。風力発電は、ダウンウィンド型風車を中心に提供を進めていく。既に国内最大級となる最大出力5MW(メガワット)の洋上風力発電設備が2015年3月に完成(関連記事)。2015年8月には商業運転を開始する予定だ(図3)。
太陽光発電関連事業は現在は順調だが、固定価格買取制度(FIT)見直しの動きから、今後の成長性を懸念する動きもある。野本氏は「太陽光発電市場については、今後2年間は市場規模は横ばいで進むと見ている。ただ、その後は市場は減少するだろう。その後は中心は風力に移る。特に洋上風力発電は一気に市場が立ち上がると予測しており、その需要をしっかり獲得していくことが重要だ」と語っている。
自然エネルギーによる電力が増える中で、系統安定化への対応も強化する。国内においては電力広域的運営推進機関の基幹システムの開発を担い2016年4月から運営を開始する他、米国やポーランドでも広域系統安定化システムの実証プロジェクトを実施する。さらに蓄電システムについても米国の実証プロジェクトに組み込んでおり(関連記事)、機器の稼働状況とともに経済性やビジネスモデルについても検証していく。新電力向けのITシステムなども提供。需給制御や電力取引、顧客料金管理、需要化向けサービスなどを総合的にパッケージしたシステムの提供を図る。
マイクログリッド(小規模なエネルギーネットワーク)同士を結んだ共生自律分散型の電力システムの展開にも取り組んでいく(図4)。共生自律分散型の電力システムは、通常時は地域に応じたマイクログリッドを展開しつつ、それらを結ぶことで大規模なグリッドを構成し、安定的な電力供給を行う。一方で非常時にはマイクログリッドとして地域ごとに展開するという柔軟で耐久力の高い電力システムのことだ。
現在、導入が急速に進んでいるスマートメーターについては、通信インフラなどを提供しているが「スマートメーターの難しさは数が圧倒的に多いことだ」と野本氏は事業の難易度を強調する。「東京電力だけで最終的に2000万戸もの世帯への設置が必要で、これらのデータをリアルタイム的に処理しなければならない。これには制御の技術とITの技術が必須で、そういう意味では日立製作所の強みが生きる分野だ」と野本氏は語っている。
今後については「まずはスマートメーターを普及させることが第1ステップとなる。その後に獲得したデータを使ってどういう新しいサービスを提供できるかという段階が来る。それに加えて、電力以外のガスや水道などのスマートメーター化も進むと見ており、発展性の大きな事業領域だといえる」と野本氏は述べている。
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