電力会社のCO2排出量が2014年度に減少、再生可能エネルギーと火力発電の高効率化法制度・規制

日本のCO2排出量の約4割は火力発電による。東日本大震災後に急増したCO2排出量が徐々に減ってきた。電力会社のうち8社が発表した2014年度の実績では、CO2排出量の最も多い東京電力が前年度比8%の減少になったほか、沖縄電力を除く7社で前年度を下回っている。

» 2015年08月05日 13時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 地球温暖化対策の一環で、一定量以上の温室効果ガスを排出する事業者は毎年度の実績を国に報告する義務を負っている。電力によるCO2排出量は国全体の約4割を占めていて、各事業者は購入した電力のCO2排出量を算出して報告に盛り込む必要がある。その基準になる電力会社のCO2排出係数が減少傾向に転じ始めた。

 電力会社10社のうち8社が2014年度のCO2排出係数と排出量を7月31日までに発表した(図1)。特に注目すべきは、販売量の最も多い東京電力がCO2排出係数を前年度から5.0%も減らした点だ。電力を購入している事業者は年間の使用量にCO2排出係数を掛け合わせて排出量を算出することになるため、電力に伴うCO2排出量を低減することができる。

図1 電力会社の2014年度におけるCO2排出係数と排出量(再生可能エネルギーによる電力の買取量などを反映した「調整後」の実績値)

 このほか東北・中部・四国・九州の4電力会社でCO2排出係数が前年度と比べて2.5〜3.1%低くなった。一方で北海道電力と関西電力はCO2排出量では前年度から減少したものの、販売電力量の減少率が大きかったためにCO2排出係数は前年度を上回ってしまった。両社ともに火力発電の高効率化が遅れている点も影響している。沖縄電力は2014年度に販売電力量が伸びて、CO2排出係数と排出量ともに増加した。

 8月3日の時点では北陸電力と中国電力の2社が2014年度の実績値を公表していない。それでも東京電力をはじめ大手のCO2排出量が減ったことから、電力業界全体で減少傾向が進んでいる。電力会社のCO2排出量は2011年度から急増して、2012年度には過去最高を記録していた(図2)。

図2 電源別の発電電力量とCO2排出量(画像をクリックすると拡大して1997〜2003年度も表示)。出典:環境省(資源エネルギー庁などの資料をもとに作成)

 2013年度になると販売電力量の減少とともに、火力発電の高効率化と再生可能エネルギーの拡大により、わずかながら減少に転じた。2014年度の減少率はさらに大きくなる見通しだ。東京電力の実績を見ると、販売電力量が4%減少して、CO2排出量は8%も減っている(図3)。特に発電効率の低い石油火力の割合を減らした効果が大きかった。

図3 東京電力のCO2排出状況の推移。出典:東京電力

 関西電力でもCO2排出量は3%減少した。2013年度には原子力発電の利用率が11%あり、2014年度には0%だったにもかかわらずCO2排出量は減っている(図4)。ただし販売電力量が4%以上も減少したために、CO2排出係数は上昇する結果になった。

図4 関西電力のCO2排出状況の推移。出典:関西電力

 各社のCO2排出係数と排出量には「調整前」と「調整後」の数値があり、電力を購入する事業者は調整後のCO2排出係数を使って排出量を算出する。調整後の排出量には電力会社が固定価格買取制度による再生可能エネルギーの電力を買い取った分が反映される。電力会社以外の電気事業者を含めて、2014年度のCO2排出係数は環境省が12月までにまとめて公表する予定だ。

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