今回、マックスプランク陸生微生物学研究所の嶋氏らは、天然の酵素に含まれる反応活性中心を模擬したコンパクトな鉄化合物を化学合成し、遺伝子組み換えを行った大腸菌が合成したタンパク質に取り込ませることで、触媒活性を示す半合成型鉄ヒドロゲナーゼ酵素の作製に世界で初めて成功した(図2)。
反応活性中心となる鉄化合物は、スイス連邦工科大学 ローザンヌ校の教授のシーレ・フー(Xile Hu)氏が、化学合成手法を用いて作製。この化合物単体では触媒活性が認められず、タンパク質の部分と組み合わせて初めて、触媒活性が確認できた。今回の研究により、酵素が触媒する反応は、反応活性中心だけではなく、タンパク質の創出する環境が触媒活性発現に重要であることを発見したという。
大腸菌でタンパク質を作ることと金属化合物を化学合成することは容易であるため、この半合成型酵素は大量生産が可能であり、工業利用の1つの条件をクリアできたといえる。今回得られた半合成型酵素の活性はまだ低く、天然の酵素のわずか1%程度だが、この性能は、これまでに開発されているほとんどの人工ヒドロゲナーゼ触媒の性能を超えている(図3)。今後さらに機能改良することも可能であるため、将来的に酵素の工業的利用に結び付くことが期待できるとしている。
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