スマートファクトリーは風と光と水で実現、生産ラインにも省エネ発想導入へスマートファクトリー(1/2 ページ)

省エネルギー法により一定規模以上の工場には年率1%以上のエネルギー削減目標が掲げられており、その実現には各企業担当者は頭を悩ませているところだ。こうした状況の中「エコプロダクツ2015」で三菱電機は自社工場の省エネ・環境への取り組みについて紹介した。

» 2015年12月24日 09時00分 公開
[三島一孝スマートジャパン]

 製造業の工場や設計開発部門においては、それぞれ生産性の改善や品質の向上など、モノづくりに関わることが、目標指標の中心となっており、省エネへの取り組みに関心が集まることは少ない。しかし、国際的に気候変動対策への動きが強まる中、日本政府としての目標値を設定した取り組みが求められており、その結果、工場などを持つ製造業にも省エネへの取り組みが義務付けられている。

 省エネルギー法により、1年度間のエネルギー使用量(原油換算値)が1500キロリットル(kl)以上の場合は、エネルギー使用状況などの報告や、エネルギー管理統括者やエネルギー管理者などの設置義務が生じる。また、中長期的に見て年平均1%以上のエネルギー消費原単位、または電気需要平準化評価原単位への取り組みが義務として求められている状況だ。

 これらの状況の中で三菱電機では、自社の工場や事業所の省エネルギーの取り組みについて、エコプロダクツ2015で紹介した。

「風」「光」「水」で環境配慮を実現した福岡県の設計技術棟

photo 図1 三菱電機のパワーデバイスイノベーションセンターの外観 出典:三菱電機

 取り組み事例の1つとして紹介されたのが、2014年3月に新設した三菱電機パワーデバイス製作所(福岡市)に新設した設計技術棟「パワーデバイスイノベーションセンター」での取り組みだ。同技術棟は従来敷地内に分散していた営業・開発・設計技術部門を集約し連携を強化することを目的として建設した(関連記事)(図1)。

 同イノベーションセンターの特徴は「風」「光」「水」の3つの切り口から省エネルギーおよび環境対応を図っている点だ。

 特に特徴的なのが「風」の取り組みである。同イノベーションセンターは、建物の中心部を吹き抜けとする構造となっている。この構造を生かし、室内温湿度と外気温湿度、風速、降雨量を監視し、自動で吹きぬけ上部の排煙窓と各フロアの排煙窓を開閉し空調機を停止する制御を行っているのだ。これにより暖かい空気を吹き抜け上部の窓から外部に排出し、各フロアの窓からは外から涼しい空気を取り入れるということが、電力を消費せずに行えるようになる。この構造により年間5万7000kWh(キロワット時)の省エネ効果を実現しているという(図2)。

photo 図2 パワーデバイスイノベーションセンターで採用している自動換気システムの仕組み 出典:三菱電機

 「光」の取り組みでは、LED照明の採用と人感照度センサーによる小まめな消灯を実現する。人感センサー採用することで、執務室やトイレ、洗面所、廊下などで人のいない空間では減光または消灯し、無駄な明かりを減らすことに取り組んだ他、窓上部にライトシェルフを設置し、直射日光を遮蔽するとともに、反射光を天井面に採り入れ、日射制御と昼光利用の両面を実現させている。これらにより昼間は窓際は明るくなりすぎるので、照度センサーでの計測を元に十分な明るさが取れる時は照明光を減らし、過剰な明かりをカットしている。これらにより省エネ効果は年間45万3000kWhを実現したという。また太陽光発電システムを屋上に設置した他、屋上緑化などにも取り組む。創エネ効果は年間3万4000kWhだとしている(図3)。

 三菱電機パワーデバイス製作所 製造管理部環境施設課専任の大田日出夫氏は「人感センサーにより人がいないデスクの照明は自動で消灯されるため、意外な副産物として残業時間の削減などにもつながっている」と述べている。入退室管理設備、LDE照明や空調、換気設備、太陽光発電システムなどの監視・制御は、三菱電機のビルオートメーション(BA)システム「Facima BAシステム」により行っているという。

photo 図3 パワーデバイスイノベーションセンターで採用しているLED照明と人感照度センサーの仕組みと効果 出典:三菱電機

 「水」の取り組みは、工場で使用した水の排水処理を行い再生水としてトイレの流し水として再利用している他、構内を流れる河川の水生生物の生態系を維持するために処理済みの工場排水を放流。これにより河川環境を維持する取り組みなどを行っている。

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