不良施工はFIT認定取り消しか、太陽光発電設備の安全規制強化法制度・規制(2/2 ページ)

» 2016年03月29日 13時00分 公開
[三島一孝スマートジャパン]
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不適切な設計や施工の抑止強化へ

 これらの状況などを踏まえ、経済産業省では安全性に対する太陽光発電設備の規制強化を進める方針である。取り組みの中心となるのが「不適切な設計、施工の抑止」である。

 まずは不適切な設計や施工がそもそも行われないように、どういう設計や施工が最適であるのかという仕様を明確化する「標準仕様の提示」と「技術基準の再検証」「簡易な安全対策の検討」などを進める方針である。特に早急に実施する必要がある安全対策として「架台、基礎の設計例など具体的な標準仕様を技術基準に例示すること」を検討する。中長期的には、現行技術基準が正しいのかどうかを実証試験を通じて検証する仕組みの構築なども進める方針だ。また、水没時の感電防止や既設設備のパネル飛散防止などに貢献する簡易な安全対策についても手法拡大を進めていくとしている。

 さらに、工事計画を要しない500〜2000kWクラスの設備で大量のパネル脱落・飛散を伴う損壊事案が発生したことから同規模の設備設置者に対し「使用前自己確認制度による技術基準適合性確認」を義務付けることを検討する。同規模の設備の使用前自己確認の対象とすることで工事計画対象外の事業用太陽光発電所の内、半数以上の確認を可能とする。

情報収集の強化

 報告の強化なども進める。事故報告の対象については「500kW以上の設備損壊が生じたもの」や「発電所構外に著しい影響を与えた事故」となっているが、これらを「家屋と区の損害の有無にかかわらず発電所構外にパネルが飛散した場合は報告義務を課す」と見直す。さらに「一定規模以上のパネルの脱落・飛散が生じた場合にも報告義務を課すことを検討する。

 さらにFIT(固定価格買取制度)と連携し、不適切な事案についての抑止力として活用を進める。再エネ特措法(FIT法)の改正法案では、電気事業法などの他法令違反が判明し事業を適切に実施していない場合に「改善命令」や「認定取り消し」を可能とする制度となっている。そのため、FIT法による認定情報などから設備情報や運転状況を把握した上で、設備の損壊が疑われる設備について保安規制当局として立ち入り検査などを行うことで、技術基準不適合事案を把握し、適切な改善を求めていくという。

自主保安の向上に向けた取り組み強化

 自主的な保安活動を行っている事業者に対し、取り組みがより広がるようにインセンティブなどを検討する。遠隔監視やビッグデータ分析などを活用し設備故障や不具合の予兆を把握し対処するなど、事業者の自主保安の取り組みを促進。例えば、2000kW未満の設備の大半は電気保安法人や電気管理技術者に対する保守管理業務の外部委託を活用しているが、ICT(情報通信技術)などの活用により高度な自主保安体制を確立している事業者については、電気保安法人による点検頻度を緩和することなども検討する。

 これらの取り組みについては、2016年度に実証実験を推進し、必要な措置を取っていくとしている(図5)。

photo 図5 太陽電池発電設備の安全確保に向けた対策 出典:経済産業省
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