東日本大震災から5年が経過して、福島県の被災地では復興に向けたメガソーラーが相次いで運転を開始した。太陽光発電の規模は全国でトップになり、県内のエネルギー自給率は30%に迫る。洋上には浮体式による風力発電プロジェクトが拡大中で、温泉地では地熱発電も始まった。
2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、福島県内ではエネルギー関連プロジェクトを中核にした「イノベーション・コースト構想」が進んでいる。福島第一原子力発電所の事故から復興する姿を世界各国にアピールできるように、太平洋沿岸に太陽光や風力をはじめ、最先端の火力発電や水素エネルギーを拡大していく構想だ(図1)。
その中でも先頭を切って太陽光発電の取り組みが活発になってきた。放射能汚染の影響で避難を余儀なくされた地域を中心にメガソーラーが続々と運転を開始している。代表的な例は飯舘村(いいたてむら)の「いいたてまでいな太陽光発電所」である。「までい」は福島県北部の方言で「心をこめて」「ていねいに」を表す。
メガソーラーは村が所有する3カ所の牧草地に建設した(図2)。発電能力は合計で10MW(メガワット)に達する。2014年6月の着工から2年弱の期間をかけて2016年3月に運転を開始した。年間の発電量は1100万kWh(キロワット時)を見込んでいる。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して3000世帯分に相当する。震災前の飯舘村の総世帯数(1700世帯)と比べて2倍近い規模になる。
飯館村が東光電気工事と共同で発電事業の特別目的会社を設立した。発電した電力は全量を東北電力に売電して、飯舘村の復興に生かす。2012年度に認定を受けたため、買取価格は1kWh(キロワット時)あたり40円(税抜き)になる。年間の売電収入は4億4000万円を見込むことができて、出資比率に応じて飯舘村には売電収入の45%が入る。
飯舘村よりも南にあって、福島第一原子力発電所に近い川内村では、「かえるかわうちメガソーラー発電所」が2016年2月に運転を開始している。避難中の村民ができるだけ多く帰ることを願って始めたプロジェクトである。村が所有する4.5万平方メートルの採草地に、2.6メガワットの太陽光発電設備を建設した(図3)。
発電事業者は福島県内で再生可能エネルギー事業を展開するエナジアである。エナジアは売電で得られる収益から20年間に約1億円を拠出して、帰村者の生活を支援する「かえるかわうち再興支援バス事業」にも取り組んでいく。
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