風力発電で大量の電力を供給できる北海道では、発電した電力を使ってCO2(二酸化炭素)フリーの水素を製造するプロジェクトも始まっている。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が中心になって推進する実証プロジェクトで、北海道内で水素を地産地消しながら、余剰分はエネルギー消費地の首都圏などに供給する構想だ。稚内市も対象地域の1つに選ばれている(図5)。
プロジェクトの第1フェーズは稚内市から日本海沿岸を南に下った苫前町(とままえちょう)の風力発電所で実施する。天候によって変動する風力発電の電力を安定化させるために、発電した電力を使って水を電気分解して水素を製造する試みだ(図6)。水素は液化してから他の地域にも輸送して、燃料電池や燃料電池自動車で利用することができる。
北海道では西側の日本海沿岸に風力発電の適地が広がっているほか、東部の広い範囲で太陽光発電やバイオマス発電の導入量を拡大できる余地が多く残っている(図7)。地熱発電と小水力発電の開発も進んでいて、今後さらに再生可能エネルギーによる電力の供給量が拡大することは確実だ。
ただし北海道内の電力需要はさほど大きくないうえに、各地域で発電した電力を道内で送電するネットワークが十分に整備されていない。発電した電力を現地で水素に転換すれば、送電ネットワークを使わずに大量のエネルギーを道内・道外に供給することが可能になる。
NEDOの実証プロジェクトにはトヨタグループの豊田通商が参加している。豊田通商は東京電力と共同でユーラスエナジーグループを運営する一方、トヨタグループの戦略で燃料電池を軸に水素エネルギーの拡大にも取り組む。北海道の風力発電で作った水素で燃料電池自動車が走る日は近づいている。
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