潮流発電で世界最大級、五島列島の海底で2019年に実証運転:自然エネルギー(2/2 ページ)
潮流は潮の満ち引きによって約6時間ごとに向きを変えながら、ほぼ一定の速さで流れ続ける。この潮汐力を利用して発電するため、天候の影響を受ける風力発電よりも安定した電力を供給できる特徴がある。設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)は40%程度を期待できる。陸上風力の20%や洋上風力の30%と比べて発電効率が高い。
2MWの発電能力で設備利用率が40%になると、年間の発電量は700万kWh(キロワット時)を見込める。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算すると約2000世帯分に相当する電力を供給できる。潮流の強い海域で多数の発電機を設置できれば、離島の電力源として有効だ。
国内では瀬戸内海と九州の北西部の海峡に強い潮流が発生する。潮流発電には1.5メートル/秒以上の流速が望ましい。五島列島の島のあいだにある海峡では3メートル/秒を超える場所が複数あり、久賀島沖の奈留瀬戸もその中の1カ所だ(図6)。
図6 潮流発電の導入ポテンシャル。m/s:メートル/秒。出典:長崎県産業労働部
政府は島国の日本にとって有望な海洋再生可能エネルギーを発展させるために、2014年度から実証フィールドを選定して導入プロジェクトを支援してきた。潮流発電は長崎県の久賀島沖を含めて4カ所が選ばれている(図7)。このうち商用レベルの発電機を設置して実証に取り組むのは久賀島沖が初めてだ。
図7 政府が選定した海洋再生可能エネルギーの実証フィールド(2014年7月時点)。出典:内閣官房
久賀島がある五島市は海洋再生可能エネルギーの開発で先頭を走っている。浮体式の洋上風力発電でも日本で初めての実証プロジェクトに取り組み、2016年3月に2MWの洋上風力発電所が商用運転を開始した(図8)。潮流発電と洋上風力発電の導入量を拡大して地域の活性化を図るのと同時に、地元の住民や漁業関係者が海洋再生可能エネルギーと共生できる離島の環境づくりを目指す。
図8 「崎山沖2MW浮体式洋上風力発電所」の全景。出典:戸田建設(撮影:西山芳一)
五島市で導入可能な潮流発電のポテンシャルは年間に9億kWhを超える(図9)。一般家庭の25万世帯分に相当する規模で、五島市の総世帯数(2万世帯)をはるかに上回る。久賀島沖で実施する潮流発電の実証運転が成果を上げれば、離島の未来に新たな可能性が開ける。
図9 五島市の再生可能エネルギー導入可能量。単位:MWh(メガワット時)。出典:五島市
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