「効率化」「複合的エネルギー」「デジタル化」「持続可能なエネルギー」の4つの世界のトレンドに対し、日本の電力業界にとっては「効率優先型のグローバルな企業経営」「発電事業のパラダイムシフト」「デジタル技術を武器としたゲームチェンジャーの存在」「市場構造の変化による進化と淘汰」の4つの課題が生まれると、シーメンス 専務執行役員の藤田研一氏は指摘する。
藤田氏は「グローバルの状況を見ても分かる通り、日本でも電力産業はパラダイムシフトを迎えている。大型の火力投資の8割が非電力会社であるなど、再生可能エネルギーも含めて従来の電力会社以外が発電する比率が増えてきている。さらにデジタル技術を武器としてICTベンダーなどの新たな事業者が電力産業に参入する動きなども増えてきている」と述べる(図2)。
国内の電力会社は従来、地域で寡占化されており、基本的には安定供給を主眼とした企業経営となっていたが、自由化が進むことで「企業間競争に勝つ効率的な企業経営が求められるようになる」と藤田氏は指摘する。
藤田氏は「海外を見ると、再生可能エネルギーは収益性が高いといえる。再生可能エネルギーを50%以上扱う電力会社では、利益率が15%を超えるところもあるが、比率が10%以下の企業は10%以下のところばかりである。日本はこの中間程度の位置付けだが利益率は10%以下だ。発電セクターの利益構造が変化しているといえる。一方で、日本で収益力が高まらない理由として再生可能エネルギーの発電コストが海外に比べて高すぎるという点がある。従来型の電力がグローバル平均に対し約1.5〜2倍なのに対し、再生可能エネルギーでは2.0〜2.5倍になっている。まだまだコスト削減する余地があるといえる」と語る(図3)。
さらにIoTなどのセンサーデータの取得と、データ分析基盤の活用により、従来は実現できなかったさまざまなサービス展開が可能となる。電力事業において、既にシーメンスでは、風力タービンで1万基、ガスタービンや蒸気タービンで700基の遠隔監視サービスを導入。これにより、故障やトラブルが起きた際も、85%は遠隔解析で問題解決ができるようになった他、98%の問題を未然に解決することができたという。
藤田氏は「電力における産業用データ分析の流れは、遠隔診断、予知保全、最適化、バーチャル発電所の流れで進化していくと見られている。既に遠隔監視についてはスタンダード化しており、これらを基にした新たな参入事業者なども生まれつつある。こうしたトレンドに積極的に対応していくことが必要だ」と国内事業者への警鐘を鳴らしている。
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