電力システム改革後に起こる、総合エネルギー産業化とビジネスモデル変革電力供給サービス(1/2 ページ)

ITベンダーであるSAPジャパンは「電力システム改革後」に起こるエネルギー産業のビジネスモデル変革を見据え、IoTやビッグデータを活用したインフラ産業の新たな事業運営を提案する。

» 2015年12月16日 09時00分 公開
[三島一孝スマートジャパン]

 電力・ガスシステム改革は順調に進行。2015年4月には広域系統運営機関が設立された他、2016年4月の電力小売完全自由化、2017年4月のガス小売完全自由化、2020年の電力発送電分離、2022年のガス導管分離まで、ロードマップ通りに進む見込みだ。

 ITベンダー大手のSAPジャパンではこれらの動きに対し、電力小売完全自由化後に必要となる料金プラン関連のシステムやERP関連システムなどの提案を進めている。2014年10月には新たに公益事業統括本部を設立しこれらのシステム導入を推進してきた。

photo APジャパンのバイスプレジデントで公共・公益・通信統括本部の統括本部長である佐藤知成氏

 SAPジャパンのバイスプレジデントで公共・公益・通信統括本部の統括本部長である佐藤知成氏は「既存の電力・ガスシステム改革については、法整備などが進み、1年前に作った組織による成果が上がってきた。ただ、電力を含むインフラビジネスは電力システム改革後に大きく変化することが考えられる。これらのデジタルトランスフォーメーションに合わせた提案を進めていくことが重要だと考えている」と述べる。

 電力やガスなどのインフラ事業が、IoT(Internet of Things、モノのインターネット)やビッグデータ分析などを活用することで新たなビジネスモデルを構築できるようにするために、新たに2015年12月15日に設立したのが「Utilities Digital Transformation Office(ユーティリティデジタルトランスフォーメーションオフィス)」である。同組織は2014年に設立した電力システム改革向けに営業やプリセールス、サービス、システム開発を行う部門とは並行して設置し、電力・ガス事業者が電力システム改革以降に新たなビジネスモデルを実現する支援を行う。新組織は現在5人体制だが「1年以内に20人体制に拡大する」(佐藤氏)。

デジタルエネルギーネットワークへの移行

photo SAPジャパン ユーティリティデジタルトランスフォーメーションオフィス シニアディレクターの田積まどか氏

 新組織を担当するSAPジャパン ユーティリティデジタルトランスフォーメーションオフィス シニアディレクターの田積まどか氏は「これからのエネルギービジネスは、スマートグリッドなども含めてデジタルエネルギーネットワークへと移行していく。全ての市場参加者はIoTなどを通じて全てデジタルの世界で連携する。その中ではビジネスモデルが大きく変化することになり、新サービスの開拓など電力やガス事業者が新しい取り組みを進めなければならない時代が来る。そこに向けて最適な事業展開は何かということを、共同開発なども含めて提案を進めていく」と述べる。

 さらに「既に電力小売完全自由化によりガス事業者の電力市場への参入なども進んでいる。今後、ガス小売完全自由化などが進むことで、電力事業者やガス事業者の境界線はなくなる。海外の状況を見ても総合エネルギー事業者という形態に変わっていくだろう。新たに事業者間の競争が激化するだろう」(田積氏)と市場の変化について話す。

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