電力システム改革後に起こる、総合エネルギー産業化とビジネスモデル変革:電力供給サービス(2/2 ページ)
SAPジャパン ユーティリティデジタルトランスフォーメーションオフィスでは、エネルギー産業がデジタルエネルギーネットワークへと移行していく状況に対し「ビジネスモデルの再考」「ビジネスプロセスの再考」「働き方の再考」の3つの点について、グローバルのSAPグループのリソースを活用して、新たな提案や共同研究・共同開発を進めていく。リソースとしては、サンフランシスコのSAPラボへの共同開発なども進めていく。提案の対象とするのは「既存の電力、ガス事業者の他、新規に電力・ガス事業に参入する企業なども対象としていく」(佐藤氏)。
図1 エネルギー産業のデジタルエネルギーネットワークへの移行(クリックで拡大)出典:SAP
SAPでは、既に海外で、曜日や地域、気象などのアルゴリズムとスマートメーター情報を組み合わせて、地域や企業などのふるまいを予測して系統制御を利用するような実証や、スマートメーターや送配電網に設置したセンサーによるリアルタイムのセンサーデータを取得し、運転パフォーマンスの監視や起こりうる事故の予測などを行う予知保全の事例などを持つ。これらの海外事例を生かしつつ、日本独自の環境に合わせた提案を構築したい考えだ。
田積氏は「既に海外の先進事例などの紹介は進めている。その一方で日本ならではの新しいビジネスの仕組みなどを、研究部門との連携で検討していく」と述べる。また、佐藤氏は「今までの電力・ガス事業は従来、限られたニーズだけを追求する形だった。日本の市場に根差した変革を進めていきたい。日本向けのソリューションを共同で研究開発していきたい」と語っている。
- 規制緩和で勝ち続けるために、先行する海外に学ぶ
3段階で進められる電力システム改革において、その第2段階である電力小売および発電の全面自由化、その後の発送電の分離が迫って来ている。それと並走してガスシステム改革の議論もあり、既存の電力会社やガス会社の垣根を越え、まさに公益業界は大きな変革の時を迎えている。このような市場環境に確実に対応して勝ち残っていくためには、どのような施策・取り組みが必要となるのか。規制緩和が先行する海外の動向や公益事業会社の事例を中心に4回にわたって解説していく。
- 小売自由化で求められる、新たな顧客サービスの仕組み
第1回では電力・ガスシステム改革の全般的な動向を説明した。今回からは「小売」「発電・送配電(設備管理)」「経営管理」の各業務にブレイクダウンして、必要な施策や海外の先進事例を取り上げる。日本でも電力とガスの小売自由化が進んでいく。自由化における小売ビジネスを考えてみる。
- 電力・ガス小売自由化へカウントダウン、裏で進むITシステムの突貫工事
日本オラクルは、2016年4月に迫る電力小売自由化、2017年4月のガス小売自由化に向け、新たに電力・ガスシステム改革支援室を設置。電力・ガス自由化に向けて整備が求められるITシステムの提案を加速する方針を示した。
- 電力自由化で加熱するITシステム争奪戦、海外ベンダーは日本市場をどうみるか
日本の電力システム市場の変革に伴い、ITシステムの新規需要が数千億円にまで拡大するといわれている。そこに熱い視線を向けているのが国内外のITベンダーだ。その1社である米オラクルは、変革が進む日本のエネルギー市場をどう見ているのか。同社 グローバルセールス担当 グループ バイスプレジデントのマーク・M・フラ氏に聞いた。
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