複雑な料金体系を採用する小売電気事業者は少なくないが、料金計算のオペレーションコストが増加する。できるだけ簡易な方式で計算できることが望ましい。料金計算の業務を組み立てるにあたっては、需要家ごとの使用量をどのタイミングで確定するかなど、検討する項目は数多くある。
連載第11回:「電力の契約変更に必要なスイッチング支援システム、自動連携か直接操作を選択」
料金計算については大半の事業者が一般電気事業者(電力会社)の計算方式を取り入れて、その上で値引きを加える形で組み立てている。ただし繰り返し言うが、その方式がどこまで継続できるかは疑問である。
今後は新電力から新電力へスイッチングが発生する点も想定しておく必要がある。自社特有のサービスをセットにして、そのサービスを享受したい需要家のみをターゲットにするなどの工夫が必要になることは間違いない。その点をふまえて料金計算の業務を考えると、可能な限り簡易な計算方式を採用しておくことが肝要である(図1)。
複雑な料金計算メニューを当初から準備してしまうと、オペレーションコストが増加すると同時に、市場の変化に追随するスピードが遅くなってしまう可能性が大きい。需要家も複雑でわかりにくい料金体系を望んでいるわけではない。
今後は他の業界を巻き込む形で料金メニューは多様化していく。特定のターゲットに向けたユニークな料金体系が出てくることが想定されるため、その時点で自社の料金戦略を容易に変更できることが不可欠となる。
スマートメーターに関連する問題として、検針日ごとの確定値を月にまたがって分散検針する点に注意が必要だ。料金計算の元になる使用量をどのタイミングで締めるのか、料金計算をいつ実施するのかを慎重に検討しなくてはならない。さらには供給電源の相対取引の請求、卸電力取引所の預託金や決済資金、送配電事業者への託送料金の支払いなど、先行するキャッシュアウトを加味しながら決める必要がある。
最も単純な方法は使用量の確定値を取得するたびに、料金計算を実施して請求する方式である。ただし請求業務が煩雑になる。料金計算や請求業務を外部に委託する場合には、手数料が高くなるなどの問題も発生する。
いずれにしても料金計算は簡易な方式が望ましい。オペレーションコストをいかに抑えるか、他のサービスをいかにうまく組み合わせるかを主眼に、業務と仕組みを組み立てる必要がある。
連載第13回:「送配電事業者と連携する顧客管理業務、需要家の使用量を取得して料金計算に」
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