国際送電網を支える送電技術の進展は目覚ましい。特に重要な役割を果たしているのが、高圧直流(HVDC)方式による長距離送電技術である。通常の送電網では電圧を変換しやすい交流で電力を送るが、直流と比べて送電時の損失が大きくなる。この点で高圧のまま直流で電力を送るHVDCは損失が小さく、国際送電網の基幹部分に採用することで送電効率を高めることができる。
それに加えて海底ケーブルの技術が進んできた。長距離の国際送電線をHVDCで海底に敷設する大規模なプロジェクトが各地域に広がり始めている(図4)。その中で代表的な例を挙げるとすれば、ノルウェーとオランダ間を結んで2008年に開通した「NorNed(ノルネッド)」だろう。全長が583kmに及び、現在でも世界最長の海底送電ケーブルである。
NorNedは±450kV(キロボルト)の高圧直流方式で700MW(メガワット)の電力を送電できる。建設に掛かった総コストは6億ユーロ、現在の為替レートで計算すると約750億円である。日本の近海と海底の状況などが違うものの、技術革新によるコスト低下も進んでいる。そう考えると、欧州とさほど大きく変わらない単価で、日本と近隣諸国の間をHVDC方式の海底送電ケーブルで接続できる可能性は大きい。
欧州では国際送電網の建設コストが下がるのと同時に、太陽光発電や風力発電を中心に自然エネルギーの電力が各国で増加して、電力を輸出入するメリットが大きくなった。とりわけ海に面した国々では、HVDC方式による国際連系を通じてさまざまな便益が期待できる(図5)。
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