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» 2017年09月01日 09時00分 公開

蓄電・発電機器:太陽光の電力を安定供給、水素と蓄電システムの併用で実現

東北大学と前川製作所は、太陽光発電の電力を水素と蓄電池を併用して貯蔵できるシステムを開発した。太陽光の電力を安定供給するとともに、非常用電源としての機能も兼ね備える。

[陰山遼将,スマートジャパン]

 東北大学と前川製作所は、太陽光発電の電力を水素と蓄電システムを併用して貯蔵・供給する「電力・水素複合エネルギー貯蔵システム」を開発した。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の事業で開発したもので、再生可能エネルギーを活用した電力供給設備と非常用電源としての機能を併せ持つ。仙台市の「茂庭浄水場」に実証システムを構築し、2017年8月から運用を開始した。

 再生可能エネルギーの有効利用や、非常時のエネルギーの長時間安定供給を実現するためには、即応性、大容量性、耐久性、コンパクト性、高効率性を備えたエネルギー貯蔵装置が求められる。電力・水素エネルギー貯蔵システムは、容量性やコンパクト性に優れている水素貯蔵システムと、即応性、耐久性、高効率性に優れている電力貯蔵装置の2種類を、状況に応じ使い分けることでこれらの要件を満たすことを狙ったシステムだ。

 実証システムは、茂庭浄水場に設置した出力20kW(キロワット)の太陽光発電設備、24kWの水電解装置、15kWの燃料電池システム、30m3の水素ガスタンス、240Nm3の水素吸蔵合金、15kW・200kJの電気二重層コンデンサ(キャパシタ)で構成する。これは実適用時の約50分の1の規模になるという。

実証システムの概要 出典:NEDO

 この実証システムでは、水素として約3日分のエネルギーを省スペースに貯蔵できる。非常時には太陽光発電の電力で水素製造を行うことで、外部燃料調達なしでも運転を継続可能だ。通常時には太陽光発電と水素貯蔵を活用して、ろ過砂洗浄などの負荷平準化やピークカット・シフトに活用できる。

 このように状況に応じて貯蔵システムを使い分けるために、太陽光発電の出力と、目標出力(負荷消費電力)の差の時間変化分を、未来予測技術により長周期成分と短周期成分に分離している。長周期成分については、エネルギーが余剰となる場合、水電解装置を用いて水素を製造発生させ、不足する場合には燃料電池を用いて発電することにより変動分の補償する。

出力変動の補償イメージ(クリックで拡大) 出典:NEDO

 一方の短周期成分については、即応性に優れた電気二重層キャパシタを電力貯蔵システムとして用いることで、出力変動に対する補償の精度を高めている。こうした補償方法とすることで、直流母線電圧を一定に保つことができ、再生可能エネルギーの出力変動を吸収しながら、安定した電力供給を実現できるという。

 仙台市では1978年の宮城県沖地震を経験して以降、主要な浄水場に24時間の停電に対応可能な非常用自家用発電装置を設置していた。しかし、2011年の東日本大震災時では、停電時間が24時間をはるかに上回った。さらに、県内の石油備蓄基地の被害や物流の遮断によって燃料確保が困難になり、浄水場の機能維持に苦慮した経験がある。

 東北大学と前川製作所は今回の実証運転の結果を踏まえ、新たな浄水場向けのエネルギーシステムの早期実現に向け、実規模システムのコスト低減に有効なシステム構成機器の容量選定指針や、システムの運転制御方法の確立を目指すとしている。

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