リチウムイオン電池の高性能化に突破口、CNTでバインダーレス電極蓄電・発電機器

戸田工業と信州大学の研究グループが、リチウムイオン二次電池の高性能化を実現する電極形成技術を開発。カーボンナノチューブを利用し、バインダーレスの電極を形成できるという。

» 2017年12月12日 09時00分 公開
[長町基スマートジャパン]

 戸田工業(広島市)と信州大学の研究グループは2017年11月、リチウムイオン二次電池の高エネルギー密度化と高出力化を実現するカーボンナノチューブ(CNT)を用いたバインダーフリー電極形成技術の開発に成功したと発表した。

 リチウムイオン二次電池は、既存技術では、体積エネルギー密度500〜600Wh/L(ワットアワーパーリットル)レベルまでの高エネルギー密度化が進んでいる。しかし、700Wh/Lレベルまで高密度化するためには、技術的なブレークスルーが必要とされる。その1つとして、電極内活物質充填(てん)密度(タップ密度)を向上するための新技術、とりわけバインダーレス化が求められている。既存電極は、活物質、導電助剤、バインダーから構成されているが、活物質の密度向上には、導電助剤やバインダーの低量化が必要であり、導電助剤では、活物質分散技術のここ数年の発展により、劇的な低量化が達成されている。一方で、活物質を集電箔(はく)に固化し、加えて充放電反応に伴う電極の体積変化を最小限に抑制するためのバインダーを減らすことは難しいとされてきた。

 今回、両者は戸田工業が開発したCNTをバインダーの代わりに用い、信州大学の開発した固定化技術により、バインダーの機能を両立しながらも高密度かつ高出力で長時間安定して繰り返し動作できる電極形成技術を共同開発した。同技術により電極密度を3.8g/cm3(グラムパー立法センチメートル)まで高密度化でき、信州大学が開発中の高電位正極と酸化物系負極の組み合わせから構成されるリチウムイオン二次電池では、700Wh/L以上の体積エネルギー密度を達成する見込みだという。

 加えて、絶縁性の樹脂であるバインダーを使用せず、電気抵抗の低いCNTを用いることにより、電極内電子抵抗を既存電極の3分の1以下、集電体界面の抵抗を8分の1以下に低減することが可能となり、高出力化を実現している。同技術は、高出力での電池動作も従来電極よりも優れていることから、電極反応の不均化も大幅に抑制できており、電池の高エネルギー密度化技術の1つとして期待されることから、今後の事業化に向け、さらなる研究開発を進めていく方針だ。

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