温度差発電技術を持つ米国のベンチャーMATRIX Industriesが日本での事業展開を拡大。同技術を生かした“体温で発電する”スマートウォッチを販売する他、温泉を活用した発電システムも検討するという。
一歩進んだ省エネ技術として、さまざまな場所で生まれる未利用熱をエネルギーとして有効利用する技術に注目が集まっている。こうした技術の1つとして、2つの物体の温度差を利用して発電する技術が挙げられる。米国のベンチャー企業であるMATRIX Industriesは、こうした温度差発電技術を活用し、“体温で発電できる”スマートウォッチ「MATRIX PowerWatch(マトリックス・パワーウォッチ)」を開発。このほど、日本での販売を開始した。
同社は米国カリフォルニア州シリコンバレーの材質化学会社として2011年に設立。事業の核としているのが、独自開発の“温度差発電技術”だ。スマートウォッチなどのコンシュマー製品だけでなく、未利用熱を活用した施設の省エネなど、産業用途への展開も見据えているという。
MATRIX PowerWatchは、 MATRIX PowerWatchは、消費カロリーの計測、歩数計、睡眠量計の機能を備えているスマートウォッチ。Bluetooth Low EnergyでAndroid端末とiOS端末に接続できる。価格は3万2800円から。
最大の特徴といえる温度差発電の部分は、スマートウォッチ本体と人の皮膚表面の温度差を利用して電圧に変換している。その後、専用の昇圧コンバーター(ASIC)で昇圧し、内蔵のリチウムイオン電池に駆動用の電力を充電する仕組みになっている。
MATRIX Industriesは熱電変換を行う素子(TEG:Thermoelectric Generator)と、ASICを独自に開発。TEGの大きさを変えることでmW(ミリワット)〜kW(キロワット)までの出力に対応できるとする。さらにTEGと組み合わせるASICの性能も強みという。「汎用の昇圧コンバーターの場合は70%の熱損失が発生するが、われわれのASICはその2倍の変換効率を持つ」(MATRIX IndustriesのCTOを務めるDouglas Tham氏)
加えて、このTEGと専用ASICによる発電効率を最大限に引き出すための、熱設計技術も強みだという。MATRIX PowerWatchはスマートウォッチ本体表面と皮膚の温度差が常に1℃以上になるよう設計されている。常に一定の温度差が生まれるようにし、発電効率を高めている。
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