――金融業界からエネルギー業界へ転身し、TRENDEの設立に至った経緯を教えてください。
妹尾氏 私は1997年に社会人になってから、20年ほど金融畑で過ごしてきました。2007年までの10年間は東京三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に努め、その後、日本で初めてソーシャルレンディング事業を手掛けるmaneoを創業しました。その後、2013年にブロックチェーン開発ベンチャーOrbを創業して、現在に至ります。
こう見ると、TRENDE、エネルギー業界への転身というのは全く脈略が無く見えるのですが、私の中では「ヒエラルキーのある業界が分散化に向かう」という点でつながっています。
ソーシャルレンディング事業を行っているmaneoは、金融という観点でもっと中小企業や個人の役に立つ金融サービスを提供したいという想いで創業しました。でも7年ほどmaneoをやって、ふと「自分は金融商売をやっているけど、現金に触ったことがない」と気付いたんです。そう思っていた矢先に、仮想通貨の「ビットコイン」と出会って、面白いと思った。さらに仮想通貨の背景を探っていくと、そこにはブロックチェーンという技術がある。こうした技術を活用すれば、日本銀行一極集中の金融ビジネスを市場化できるのではないか――という可能性を感じ、Orbを創業しました。
その後、2017年2月にウィーンで開かれた「Event Horizon」に参加したんです。これは、グリッドシンギュラリティという欧州のブロックチェーン事業を手掛けるベンチャーが主催するイベントです。そこで、まだ概念実証(PoC)のレベルではありますが、実際にブロックチェーンを活用して電力取引を行っている事例を見て、大きな感銘を受けたんです。
私がこれまでいた金融業界とエネルギー業界は、業界構造の点で類似する点が多い。金融業界は日銀を頂点とした強固なヒエラルキーがありました。でも、それが仮想通貨やブロックチェーンの登場によって、業界の構造が逆転するような、大きなゲームチェンジが起きはじめた。低金利による低収益に悩むメガバンクが、こうしたテクノロジーの登場に危機感を感じはじめたんです。金融庁の規制緩和もあり、今ではメガバンクもフィンテック事業を推進していますよね。さらに業界内に多くのベンチャーが登場し、これまでになかった市場競争が生まれはじめています。
エネルギー業界もこれまでは非常に中央集権的な構造だったと思います。しかし、電力の自由化によって新たな市場競争がはじまっている。その中でブロックチェーンを活用し、P2Pなど非中央集権型のエネルギー供給の仕組みを作っていくというのは、非常に面白いのではないかと感じたんです。
技術が成熟し、当局が競争を促すようになれば、金融業界で起きたゲームチェンジが、必ずエネルギー業界でも起こるのではないかと感じています。
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