丸紅も“卒FIT太陽光”の買い取り参入、「再エネのプラットフォーマーを目指す」太陽光

丸紅新電力がベンチャー企業のパネイルと新会社「丸紅ソーラートレーディング」を設立。“卒FIT”を迎える住宅太陽光発電の余剰電力買い取りサービスを開始した。

» 2018年11月08日 07時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 丸紅新電力は2018年11月7日、ベンチャー企業のパネイル(東京都千代田区)との共同出資で、住宅太陽光発電の余剰電力の買い取りサービスなどを展開する新会社、丸紅ソーラートレーディング(東京都中央区)を設立すると発表した。同日より受け付けを開始しており、初年度に3万件の契約を目指す。

同日に開いた会見に登壇した、丸紅新電力 代表取締役 西山大輔氏、丸紅ソーラートレーディング 代表取締役 内田健介氏、パネイル 代表取締役社長 名越達彦氏

 2019年10月移行、「再生可能エネルギーの固定買取価格制度(FIT)」の買い取り期間が終了する住宅太陽光発電設備が登場する。こうした“卒FIT”の太陽光発電の電力は、小売電気事業者にとっては新たな電源となる他、環境価値が見込めるという背景もあり、買い取りサービスなどを発表する企業が相次いでいる。

 丸紅ソーラートレーディングも、こうした卒FITを迎える住宅太陽光発電をターゲットにした買い取りサービスを展開する。代表取締役には丸紅および丸紅新電力で2006年から電力事業に従事してきた内田健介氏が就任する。

 買い取りサービスの展開地域は全国で、対面営業での顧客獲得を計画している。それに伴い、全国で代理店となるパートナー企業の募集も開始する。「既に太陽光発電システムメーカー、住宅関連メーカーなど、複数社と大筋で基本合意を結んでいる状況。今後は地域に根差した太陽光発電関連の企業、新電力、自治体なども含め、幅広くパートナーシップを広げていく方針」(内田氏)。

 同社では買い取った電力を、小売電気事業者やJEPX(日本卸電力取引所)などに販売する計画。再エネ電源比率を高めたい小売電気事業者など、親会社となる丸紅新電力に限定せずに販売を行っていく予定だという。

 内田氏は同日に開いた会見で、「(同社が)目指すのは再エネ電力のプラットフォーマーになること」と語る。卒FIT太陽光の買い取りおよびその販売を足掛かりとし、将来はバーチャルパワープラント(仮想発電所)の構築など、ITを活用した分散電源向けサービスの展開を目指すという。

中長期の事業イメージ

 同社の設立における資本金は1500万円で、丸紅新電力が60%、パネイルが40%の比率で出資している。パネイルは、2012年の設立のベンチャー企業で、電力事業向けのクラウドプラットフォーム「Panair Cloud(パネイルクラウド)」を展開している。これはクラウドベースのサービスで、人工知能(AI)を活用し、営業、顧客管理、受給管理、請求など、電力事業に必要な各種業務のオペレーションを一気通貫で効率化できるのが特徴という。なお、2018年4月には、東京電力エナジーパートナーと共同で、電力・ガス小売りを手掛ける新会社PinT(ピント、東京都千代田区)を設立している(関連記事:ITでエネルギーを“モノからコト”に、東京電力が新電力ベンチャーと新会社

 丸紅新電力が卒FIT太陽光向けサービスを展開するにあたり、パネイルとの共同出資で新会社を設立した理由には、パネイルの技術による買い取りサービス業務の効率化に加え、将来の分散電源向けサービス、再生可能エネルギーの流通プラットフォームの構築に向けたIT基盤を構築するといった狙いがあるようだ。

 なお、分散電源や再エネを活用した新しいサービスの創出に向けては、丸紅が実施するアクセラレータープログラムの活用など、グループ内で連携した取り組みも進める。この他、家電・産業機器メーカーなどとの共創にも取り組む方針だ。

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