EVの蓄電池と系統をつなげる、再エネの出力変動を吸収電気自動車

豊田通商と中部電力は、国内初という電気自動車の蓄電池から系統に電力供給を行う実証実験を行う。再生可能エネルギーの出力変動の吸収など、電力系統の安定化に生かせるかを検証する狙いだ。

» 2018年11月19日 09時00分 公開
[スマートジャパン]

 豊田通商と中部電力は2018年11月、愛知県豊田市の豊田市民文化会館駐車場で、国内初めてという電気自動車(EV)の蓄電池に充電した電気を電力系統へ供給する(V2G、Vehicle to Grid)実証試験を行うと発表した。今回の実証試験では、EVが移動手段としての利用に加え、駐車時にも付加価値を生み出す活用方法を検証。具体的には、これまで構築してきたV2G制御システムの需給調整能力を実際の電力系統下で検証し、V2Gが電力系統に与える影響を確認する。実証は2018年11月14〜16日および同年12月12〜14日の2回行う計画だ。

 太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー発電は、現在、世界的に導入が進んでいるが、天候により発電出力の変動があることや、需要を超える余剰電力を発生させる場合があることが課題となっている。V2Gは、EVなどの車載蓄電池を活用することにより、再エネ出力の変動の影響を抑制する「調整力の提供」や、再エネの余剰電力を蓄電して電力が必要な時間帯に供給する「供給力シフト」を可能とし、再エネの課題を解決できる技術として期待されている。

 実証試験では豊田通商が、欧米でV2G事業を展開する米ベンチャー企業のヌービー社と構築したV2G制御システムと連携した充放電器にEVを接続。V2G制御システムからの指令に対し、EVの蓄電池から実際の電力系統への受電や供給の応動時間や継続性を検証し、V2Gの需給調整能力を確認する。特に、指令に対して早い応動が求められる調整力(周波数調整力)としての活用の可能性を検証。併せて電力系統に計測器を設置し、充放電器からの電力系統への供給に伴う電力系統への影響を確認する。

 実証試験の結果をもとに、V2Gの活用に向けた課題などをまとめ、2019年2月に資源エネルギー庁へ報告書を提出する予定だ。

 豊田通商は、アグリゲーターとしてV2G制御システムを活用し、電力系統に対して調整力の提供や、再エネの供給力シフトなど、EVの新たな価値の創造を目指す。

中部電力は、一般送配電事業者の立場からV2Gの電力系統への影響評価を行い、新たな調整力の確保に繋がる技術の向上に寄与することで、安全・安価で安定的な電気の供給に取り組む。

 なお、今回の実証試験は、両社が資源エネルギー庁の補助事業である「平成30年度需要家側エネルギーリソースを活用したバーチャルパワープラント構築実証事業費補助金」のうち「V2Gアグリゲーター事業」に共同で申請し、補助金の執行団体である環境共創イニシアチブより2018年5月29日に交付決定を受けている。

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