ニュース
» 2018年12月03日 07時00分 公開

「ポストパリ協定時代」における企業の気候変動対策(4):世界トップ企業が加盟する「RE100」、日本企業が「再エネ100%」を達成するには? (1/4)

「パリ協定」以降の企業の気候変動対策について解説する本連載。第4回は日本企業の加盟も増えている国際的な環境イニシアチブ「RE100」について解説する。

[山口岳志 日立コンサルティング エネルギーコンサルティング本部 マネージャー,スマートジャパン]

第1回「世界で広がるESG投資、企業も気候変動対策を無視できない時代へ」

第2回「気候変動対策の“主役“は、なぜ国から産業界へシフトしているのか」

第3回「環境目標の“科学的な整合性”を裏付ける、SBT認定の手順とポイント」

 本稿では、2015年に成立した「パリ協定」以降における企業の気候変動対策の動きについて概説し、各種イニシアチブの紹介や、それらが設立に至った背景、そして実際の企業の動きについて実例を交えて紹介していきたい。その上で、日本企業が具体的にどのようなアクションを取り得るべきか、どのような対外発信を行い得るのかを考えていきたい。

 前回はパリ協定が定めた2℃目標を達成するための企業の自発的な取り組み(イニシアチブ)であるSBT(Science Based Target)について、認定取得に向けた手順やポイントを紹介した。今回はSBTとともに注目されているRE100について、特に日本企業が取得するためのポイントについて解説する。

本連載で解説予定の制度/イニシアチブ

SBTは「目的」、RE100は「手段」

「RE100」のロゴ 出典:The Climate Group

 RE100は、国際環境NGOのThe Climate Groupが、2014年9月(SBTの発足と同時期)に開始したイニシアチブで、自社の事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギー(再エネ)にする取り組みである。アップル、アマゾン、J&J、JPモルガン、BMWなど、欧米のリーディング企業の多くがRE100に参加しており(9月末時点での米企業時価総額トップ10のうち、まだ未参加の企業はバークシャー・ハサウェイとエクソンモービルのみ)、2017年4月にリコーが参加したことにより日本企業の参加も加速。ソニー、富士通、積水ハウスなど日本を代表する大手企業も次々に参加を表明している。

公開情報をもとに筆者が作成。米時価総額ランキングトップ企業のほとんどがRE100に参加していることがわかる

 SBTもRE100もESG投資における重要な指標であるが、「脱炭素」という視点でみた場合、SBTは「目的」、RE100は「手段」と位置付けることができる。電力を100%再生可能エネルギーにすることは、日本においてはハードルの高い取り組みだが、達成できれば電力消費由来のCO2排出量(Scope2)を0にできる。

 RE100ほど有名ではないが、The Climate GroupはRE100の他に電気自動車の利用を推進するEV100(日本ではイオンとアスクルがRE100と同時に加盟)、事業のエネルギー効率を倍増させるEP100(省エネ効率を50%改善など、日本では大和ハウス工業が参加)も推進している。これらのイニシアチブは企業がリーダーシップを取って、パリ協定における2℃目標達成のための積極的な推進をもたらす手段として位置付けられている。

 RE100においては、参加と同時に100%を達成する年も宣言する。例えば、日本で最初にRE100参加を表明したリコーは、2030年までに最低でも全電力の30%を再生可能エネルギーで賄い、2050年までに100%にする、という内容で宣言を行った。多くのRE100企業が、数年後あるいは10年、20年といった将来に向けて再エネ比率を上げていき、なるべく早い時期に100%を達成する計画を立てている(欧米ではアップルやマイクロソフトのように、既に100%達成した企業もある)。

 RE100の取り組みは、宣言を行った企業だけでなく、そのサプライヤーに対しても波及する。有名なところでは、アップルは部品の供給元に対して再エネの導入を呼び掛けており、世界中で23社ほどのサプライヤーがアップル向けの製品製造にかかるエネルギーを100%再エネにすることを公約している。アップルのサプライヤーは日本国内にも50社ほどあるが、このうちイビデン、太陽インキ製造がアップル向け製造における再エネ100%を宣言している。

 さて、実際問題として日本企業がRE100を達成するにはどのようにすればよいだろうか? 日本では、大手電力会社が販売する電力は、天然ガスや石炭などの化石燃料を用いた火力発電をメインにしているため、通常の方法で再エネを調達することは難しい。RE100では再エネ電力調達の手段として「RE100 CRITERIA」を発行しており、その中でいくつかの調達オプションを例示している。その中で、大きく分けて日本企業が取り得る方法としては、

  • 方法1.敷地内に設置した太陽光発電設備など、自社が保有する発電設備による自家消費
  • 方法2.他社からの再エネ電力購入
  • 方法3.グリーン電力証書など証書の利用の方法がメインになる。

この3つが挙げられる。現在140を超える企業がRE100に参加しているが、ほとんどの企業が上記の手段のうち2つ以上を組み合わせることによって再エネ比率100%を達成、あるいは達成しようとしている。

100%再生可能な電力を達成するにあたって取り得る手法。RE100 Technical Working Group「RE100 CRITERIA」(http://media.virbcdn.com/files/a2/0b0b5f7dd04b135f-20150331_RE100Criteria_April2015.pdf)を基に筆者作成

 以下では、この3つの方策の具体的な内容と金額感について解説する。

       1|2|3|4 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.