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【前編】孫正義×サム・アルトマン 約50分のAI対談を文字起こし 「マサ、金はあるのか?」への回答は(2/2 ページ)

» 2025年02月04日 13時16分 公開
[松浦立樹ITmedia]
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10倍×10倍×10倍 AIは“1年で1000倍”進化する?

 そうですね。モデルの改良はかなり進んできたと思います。モデルは1年に10倍ぐらい性能が上がっていますかね?

サム 科学的根拠はなく、ざっくりとした回答になりますが、毎年IQが1ずつ上がっていくと、使っているコストが半分になっているような気もしています。

 チップ当たりにすると、コストは10分の1ぐらいですかね。そうすると、同じ予算で10倍のチップを買うことができるということですよね。

サム そうですね。アルゴリズムもさらに効率的になるので、結果としてそこも変わってきます。実は2018〜19年に「GPT-1」「GPT-2」が出たころ、それを見たとき誰もAIを真剣に考えておらず、見てすらいなかったかもしれません。「GPT-3」が出たとき初めて、「もしや……」と思う人も現れて、「GPT-4」になるとかなり使えるという評価になりました。

 昔のコンピュータルミュージアムに行ったことがあるんです。その当時はどうしていたかなど、そこからコンピュータがどうなってきたかなど、コンピュータの進化が見えるわけです。GPT-3も今見ると、50年前にできたコンピュータのように思います。数年前にできたGPT-3でも、今使うと「ちょっとこんなもん?」と思います。

 ChatGPTは22年11月末にできたものです。GPT-4が出たのが23年3月。こういった進捗を見ると、これだけモデルが素早く進化し、より安くなっているということも明確に分かってきました。進化のカーブが非常に急激に上がっているとも思います。

AIは“1年で1000倍”進化する?

 私からすると、AIモデルは1年に10倍ぐらい改良されているように感じていて、業界の努力もあって、性能が10倍になっているように感じます。その上で、Stargateができれば、チップの数も1年で10倍に増やすこともできます。つまり、10倍×10倍×10倍で、年間で1000倍ということです。その翌年には、さらに10倍×10倍×10倍で1000倍、前年の1000倍と掛け合わせると100万倍。さらに1年後には、10億倍になります。

 直近で中国DeepSeekの発表があったと思います。彼らがこれだけキャッチアップができるんだと分かり、1年後にはより安くなっていくと思います。サムはそこからさらに上を行く形でo3やo4というAIモデルを近いうちに発表するかもしれません。

 つまり、どれだけ二次曲線的に進化しているのか。そこが気付かれていないところだと思います。なかなか感じにくいかもしれませんが、間違いなくそのように進んでいます。これはとてもすごいことですよね。

 例えば、10億倍の性能を持つAIモデルが数年後に出てくるということになれば、さらに10年経てば、ありえないほどのすごいAIが生まれる。人が今予想できないほどのものになるということです。

 人間は物事を直線で考えがちですけれども、二次曲線となると、直線を超えて成長していきます。その1番前にいるサムはまさにそれを感じてますよね。

サム そうですね。どんどんそれを信じて進んでいくしかないと思います。o3がどれほど悪かったかと、数年後に思うかもしれませんね。

「マサ、金はあるのか?」

 AIエージェントが生まれ、これからはプロンプティングだと言われても「これは難しいから私にはできない」と思う人もいるかもしれません。しかし、これだけ進化が進んでいくと、それも簡単になっていく。ユーザーが何か特別なものを導入する必要もなくなり、よりフレンドリーになり使いやすくなるでしょう。

 例えば、今ここでお互いに目を向けて音声で喋ってるように、それぞれが持つAIに目を向けて、声や目を見て話すことができるようになるかもしれないですよね。顔や周りを見て判断したり、いろいろな音声のトーンから感情を理解したりするように、人同士もコミュニケーションと同じような形になる。それが近い時代に起きるといえると思います。

 一方、一部の人からは「Statgateは投資額が多すぎだ」「どうやって回収するんだ」「マサ、金はあるのか?」などと言う人もいます。どう思いますか?

イーロン・マスク氏はStargateについて「ソフトバンクGらは金を持っていない」と指摘していた

(関連記事:「ソフトバンクGやOpenAIらは金を持ってない」──イーロン・マスク氏、新事業「Stargate」に“口撃”

サム 私も言いたかったことなんですけれども、AIが直線的に伸びるとしたら、それに対するリターンは二次曲線的な伸びだと思います。やはり経済的な価値はもっと作れると思います。もちろん投資額はかかりますが、利益も同時に伸びていくと思います。

 イーロンマスク氏、私たちの共通の友人ですね。

サム あなたの友人じゃないですか?

 イーロン・マスク氏は「マサ、金はあるのか?」と言います。しかし、絶対実現させますよ。われわれはソフト“バンク”(銀行)ですから。絶対に実現させます。

 中編へ続く

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