孫 現在構想しているAIエージェントについても説明をしてもらいますか?
サム ジェネリティックエージェントというものがあります。これは「deep reseach」のデモでも見ていただいたようなエージェントで、その会社にとってそれぞれ独自のエージェントになります。
例えば、より前後の文脈を理解した従業員のような形のエージェントが欲しいという会社もあるかもしれません。その場合は全てのシステムに接続する必要がありますし、全ての情報を理解し、会社の動き方についても理解する必要があると思います。これはカスタマイズで対応し、それぞれの会社ごとに必要な形で選んでほしいです。
孫 例えば、Cristalがある会社とない会社では、電気がある国と電気がない国ぐらいの大きな違いがあるともいえると思います。または、自動車がある国と自転車しかない国とも言えますね。
サム そうですね。それぐらいの現実感だと思います。私は刀のような古代の美術にとても関心があります。刀を使っていた時代では刃だけでなく、持ち手や鞘などいろいろなものが必要だったと思います。これが技術で、時代と共に進歩してきたのだと思います。
AIも同じで、技術と共に変わっていくものだと考えています。それを事業に組み込んでいかない会社というのは、AI導入した企業と競争していくのは難しくなると思います。
孫 これは企業単位だけの話ではなく、直近の例としてDeepSeekなどが出ています。(サムたちは)危険な回答結果は出力しないなど、AIの出力結果が与える意思決定へのリスクを配慮し、人間の安全を担保するために注意を払ってきたと思います。
AI技術や出力結果は99%似ていますが、残りの1%を占める人間を守るための安全装置や、国家安全保障を守るための仕組みの実装などは、細かな調整が重要です。そこに多くの力を注いでいますよね。
サム その通りです。社会にとっての境界線がどこなのかは分かりませんが、われわれは安全面などを非常に気にしており、かなり努力をしています。ここも評価してもらい、ユーザーたちが喜んで使ってくれていると思っています。
孫 政治的な話にはあまり関わりたくないのですが、AIを間違った使い方をすれば国によっては非常に危険な状況が起こり得ます。(AIの発展は)場合によっては、人類にとってもよくない結末、例えば戦争などを招きかねないということですよね。
サム 潜在的にはそのようなリスクもあると考えています。
孫 その部分についても、細心の注意を払っていると理解しています。また、CristalのようなAIエージェントは、人によってはコスト削減に貢献するものなのか、それとも人の仕事を奪ってしまうものなのかと気にしている人もいます。この点について、サムはどのように考えていますか?
サム AIは経費削減に貢献できると思います。しかしそこが問題ではなくて、どのくらいできることが増えるかという点に注目すべきかと思います。もちろん「自分の仕事がなくなってしまうのか」と心配する人がいることも理解できます。一方、人間がよりできることを増やしていくことも必要だと思っています。
私が1番個人的に楽しみにしているのは、AIによって今まで導き出せなかったような新しい知識を得る手助けをしてくれることです。科学的な見識も広がりますし、これまで長年時間を費やしていた作業が効率化できることで、新しい発見もあり得ると思っています。
後編に続く
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