ChatGPTユーザーのほとんどが大学生──米OpenAIの日本法人・OpenAI Japanの長崎忠雄社長は3月17日、同日に開催した教育業界向けイベント「OpenAI Education Forum Tokyo」(東京都渋谷区)で、サービスの利用動向についてこう話した。
長崎社長によると、ChatGPTには現在、全世界で4億人のウイークリーユーザーがいるという。このうち「5人に4人が35歳以下。ほとんどが実は大学生」として、日本の状況も同様と指摘する。「日本でも何百万人ものユーザーがChatGPTを利用している。大学生、特に18〜24歳が最多のユーザー層になっている」(長崎社長)
こうした状況を踏まえ、2024年から提供している教育機関向けプラン「ChatGPT Edu」の利用動向についても明らかにした。ChatGPT Eduは、教育機関が持つ学生に関する情報システムと、ChatGPTを連携できる点が特徴のサービス。ChatGPT Edu内でやりとりするデータはAI学習には利用しないとしており、学生と教員は安全かつ効率的にChatGPTを活用できるという。なおやりとりのデータは教育機関内で保管するため、課題などにおけるChatGPT Eduの不正利用もチェックできるとしている。
例えば、24年初頭にChatGPT Eduを導入したアリゾナ州立大学では、250を超えるプロジェクトを実施。ChatGPTを活用し、学生は模擬面接の練習をする他、教員は授業のカリキュラムの改善して新しいコースを提供しているという。12日には、滋賀大学が日本国内で初めてChatGPT Eduの導入を決定。プログラミング習得の補助や、語学などに活用するとしている。
イベントでは、教育関係者がAI活用について実例を語る一幕もあった。例えば東京大学でAIを研究する山崎俊彦教授は、東大が語学の授業で生成AI利用を許可した結果、当初の見込みを大幅に超えて実力を伸ばす学生が出てきた事例を紹介した。
「学びを深める、高めるチャンスがAIによって生まれたのではないか」「それは語学だけでなく、色んなところで起こっていくのではないかと思っている」(山崎教授)
一方で、今後の課題点について触れる場面もあった。イベント中のパネルディスカッションに登壇した、Sakana AIの秋葉拓哉さん(Research Scientist)は、教育とAIに関する今後の課題として「丸投げ」と「動機付け」というキーワードを挙げた。
秋葉さんは、教育現場の今後について「(AIに)丸投げがワークしてしまう世界自体は避けられない」と予測。そのため「AIが学びを動機付けしてくれる」ことの重要性が増すと話した。
「人間は別にしないといけないから勉強しているわけではなく、豊かになるためにやっている。僕らも親から言われても、なかなか勉強しようと思わなかったけれど、GPT-4.5のように人間をよく理解し、高い説得力を持って、こう取り組んでみようと言うパーソナルコーチのような存在になるのではないか」「ただ正解を与えるだけでなく、その人間を導くようなAIが、1つの可能性として面白いAIかなと考えている」(秋葉さん)
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