ChatGPTの登場から2年半。後続サービスも続々と誕生し、ビジネスにおいて生成AIの活用は当たり前になりつつある。一方、毎日のように更新され続ける情報に追い付けず、まだその真価を発揮し切れていないという人も多いだろう。
そこで本連載では、エグゼクティブやインフルエンサー、企業内のAI活用推進者などの生成AI活用法に注目。圧倒的な実力を発揮する“トップ人材”たちは、どんな生成AIをどのように使いこなしているのか。そしてそんな人材を抱える企業は、どのようにAIを利活用しているのか──業界や職種を問わず追いかける。
今回は、サイバーエージェントで社内の生成AI活用を推進する組織「AIオペレーション室」に着目。同組織のプロダクト開発チームリーダーを務め、1つの案件で月約1000時間の業務効率化を達成したという齋藤泰史さんに、仕事で活用しているAIツールについて聞いた。
齋藤さんが開発業務で利用しているのが、AIコードエディター「Cursor」と「Windsurf」だ。「プロダクト開発でコードを生成したり、コードを修正したりするのに利用している」とのことで、最近は「各エディターのrule定義」を意識しているという。
「Cursorだと『ProjectRules』で、プロダクトや拡張子ごとなどでAIの動作を制御できる。AIやAgent機能が賢くなっても、その時々でAIの動きが変わってしまうのを統一できるのが、このProjectRules。定義をすることで、性能が向上したのを実感している」(齋藤さん)
加えて生成AI向けのノーコードツール「Dify」も活用している。サイバーエージェントでは全社的に導入しており、齋藤さんは「LLMモデルの比較やプロンプトによる出力の変化を確認するのに利用している」という。
一方情報収集では、AI検索サービス「Felo」を活用しているという齋藤さん。Feloは、AIスタートアップSparticle(東京都中央区)が手掛けるAI検索サービスで、収集した情報の整理や要約などができる。「ある程度決められたステップで指定した内容についても調査してくれる機能もあるので、分からないことを調べるのに便利」と齋藤さんは話す。
なおChatGPTの「deep research」については、詳細に調べるときには有効である一方、検索に時間がかかるなどのデメリットもあると説明。「今までGoogle検索していた内容には『Felo』が合っていると思う」とのことだ。
Sparticleが提供するブラウザ拡張機能「Glarity」も活用している。Glarityでは、WebページやYouTube動画、PDFなどのコンテンツを要約できる。「チャット機能でページ内容について対話しながら理解を深めることもできるので、要約して気になったものはより深く理解するのに役に立っている」(齋藤さん)
他にも、Googleが提供するAIメモアプリ「NotebookLM」も使っているという。NotebookLMは、ユーザーが指定したファイルやWebページなどを情報ソースとし、質問に対して回答を返す。齋藤さんは「(ノウハウ系や生成AI関係の)YouTubeチャンネルにある動画を全て追加して、そのチャンネルの内容を理解する」といった活用方法を挙げた。
「ミーティングの文字起こしデータを追加して、議事録の作成や過去のミーティングで議論した内容について確認するのにも利用している。途中からプロジェクトに参加する人がいたときにも、今までの内容の確認・理解に役に立っている」(齋藤さん)
【修正履歴:2025年3月25日午後7時】記事掲載当初「ChatGPTの『deep research』については、検索に時間がかかるなどのデメリットがある」と記載していましたが、「ChatGPTの『deep research』については、詳細に調べるときには有効である一方、検索に時間がかかるなどのデメリットもある」に修正しました。
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