「30分くらいはざわついていた」――ディー・エヌ・エーの住吉政一郎氏(AIイノベーション事業本部 本部長)は、同社の南場智子代表から、AI活用による効率化で「現在の事業の人員を半数に削減し、新規事業に充てる」と聞いたときの経営陣の反応を、このように語る。
住吉氏は9月2日、ITエンジニア向けの転職支援を手掛けるファインディ(東京都品川区)が東京ミッドタウン(東京都港区)で開催したイベント「AI×開発組織Summit」の講演に、ファインディの山田裕一朗代表と共に登壇。ディー・エヌ・エーが掲げるAI戦略「AIオールイン」の実情などを対談形式で語った。
ディー・エヌ・エーは現在、同社が2月に開催したイベントで南場代表が明かした「AIにオールインする」という事業方針のもと、現在の事業を運営する約3000人の人員を半数に削減し、新規事業に再配置することなどを目標に、生成AIの活用に取り組んでいる。
その一環として4月に発足したのが、住吉氏が本部長を務めるAIイノベーション事業本部だ。生成AIを活用した新規事業に注力しており、ここ3カ月で10個の新規事業を創出。9月時点で20個の新規事業を立ち上げているという。
一連の事業は、大きく2種類に分けられると住吉氏。1つ目は、AIシステムが中心にあり、サービスなどで収集したデータをAIの改良に利用することで事業の継続的な成長を目指す「データフライホイール」がうまく機能するもの。2つ目は、データフライホイールが完全に達成できるわけではないが、事業構造としてAIの活用によりコストを大きく削減できるものだ。
ディー・エヌ・エーでは、このような定義を社内で共通化。企画を評価するに当たっては「そういうものじゃないとOKにしない」という制約をあえてかけているという。制約がある方が、企画を考えやすい人が多いといい「その制約なら、こういうプロダクト・体験が作れるのでは」と企画を持ってくる例が少なくないと住吉氏は話す。
また企画は公募以外に、他部署からの持ち込みも許可している。他部署の社員が企画を提案し、実際に通過すれば、ディー・エヌ・エーの「シェイクハンズ制度」(本人と異動先の事業部長の意志が合致すれば、上長や人事の介入なしで異動ができる制度)によりAIイノベーション事業本部に異動も可能だ。
他にも、AIイノベーション事業本部では「いざ作り始めると、想定と全然違う」といったケースを未然に防ぐためなどに、企画の際にはプロトタイプを用意することを必須化。これにより、途中で企画を取り下げる社員も出てきた結果「手間も減り、企画のクオリティーも上がった。数はトータルで増えた」(住吉氏)としている。
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