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Web2.0は良くできた「UFOキャッチャー」だネットベンチャー3.0【第20回】(2/2 ページ)

» 2006年12月15日 12時00分 公開
[佐々木俊尚,ITmedia]
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C2C型広告に求められるWeb2.0的リスペクト

 同様に、ブログマーケティングやアフィリエイトなどのC2C型広告であっても、ユーザーの主導権を担保し、可視化し、さらにそこにWeb2.0的なリスペクトをきちんと保持させることができるアーキテクチャーを確立することができれば、検索連動型広告と同じような巨大な市場を生み出す可能性は眠っている。

 これまた大胆に簡略化してしまえば、

<リスペクト――アテンション――プロフィット>

 という導線が存在するのではないかと思うのである。この導線をうまく描き出せるかどうかが、今後のアテンションエコノミーにおける収益モデルのカギになるのではないかと思う。

 そうしてこうしたモデルを確立することができれば、そのときにはGoogleやAmazon.com、Apple Computerが支配する「地主制度2.0」を打破し、プラットフォーム支配をはねのけて、新たなエコノミーを作り出すことができるようになるかもしれないのだ。そしてそのモデルを作り出すのは、これからのインターネットベンチャーの役目である。

「インターネット業界」の10年

 話を戻そう。

 「インターネット業界」という言葉が日本の産業界に出現して、ようやく10年を超えた。この間、さまざまな会社が現れては消え、あるいは巨大化し、中には犯罪の闇に呑み込まれていった会社もあった。

 1990年代の終わりまで、ネット業界は毀誉褒貶にまみれていた。「技術力もないくせに、態度だけはでかい」「営業だけで持っている会社だ」「バブルだ」とマスメディアなどからはさんざんな言われようだった。しかしそうした指摘の一部は当たっていないこともなかったし、反論するだけの根拠もあまりなかったというのが正直なところだったからだ。

 インターネット業界が反撃に転じるきっかけとなったのは、2002年以降にブロードバンド普及がしてきたことだった。ブロードバンドによって広帯域、常時接続がごく当たり前になってくると、人々のインターネット利用のスタイルは劇的に変わってくる。ネット上で情報収集し、買い物をして、さまざまなツールを使いこなすというのがコモディティー(日用品)化してきたことで、ネットのビジネスは深く深く、人々の生活や仕事、精神へと進入していくようになった。そしてこの結実として、Web2.0という概念が生まれ、そしてこうした概念が生まれたことによって、ネットのビジネスの進化はさらに加速される結果となった。

 この連載で私が狙ったのは、そうした進化の過程がいまどのような段階にあり、そして今後はどのようにして進んでいくのか。そのフェーズの中で、どのようなビジネスチャンスが生じつつあるのかということを、描き出すことだった。その狙いが成功したのかどうかはよくわからないが、とりあえずは最先端の一端ぐらいをかいま見ることはできたのではないかと思う。


 実はこの連載の最初のプランは、書籍からスタートした。光文社新書編集部から今年夏に書籍の依頼を受けて、それで私は日本のネットベンチャーに焦点をあてて、Web2.0の世界を描き出すというプランを提示した。Web2.0が常にシリコンバレー発のモデルとして語られていることに、若干の不満があったからだ。「ネットベンチャーは、シリコンバレーだけではない。いまや日本のネットベンチャーには素晴らしい逸材が集まっていて、彼らがドライブさせようとしている新たな世界に光をあてていきたい」と強く思っていたからである。

 だが残念なことに私はその当時たいへん忙しく、取材から執筆までを書き下ろしで一気呵成に進めるのは難しい状況だった。そこでITmedia News編集部に連載をお願いし、最終的な書籍化までの間、Web上で記事を掲載させていただくことになった。書籍は2007年1月、光文社新書から『次世代ウェブ〜グーグルの次のビジネスモデル』というタイトル(仮)で刊行される予定だ。この場を借りて、関係者の方、並びに取材に協力いただいたネット業界の方々に御礼を申し上げておきたいと思う。ありがとうございました。

佐々木俊尚氏のプロフィール

1961年12月5日、兵庫県西脇市生まれ。愛知県立岡崎高校卒、早稲田大政経学部政治学科中退。1988年、毎日新聞社入社。岐阜支局、中部報道部(名古屋)を経て、東京本社社会部。警視庁捜査一課、遊軍などを担当し、殺人や誘拐、海外テロ、オウム真理教事件などの取材に当たる。1999年にアスキーに移籍し、月刊アスキー編集部デスク。2003年からフリージャーナリスト。主にIT分野を取材している。

著書:『徹底追及 個人情報流出事件』(秀和システム)、『ヒルズな人たち』(小学館)、『ライブドア資本論』(日本評論社)、『検索エンジン戦争』(アスペクト)、『ネット業界ハンドブック』(東洋経済新報社)、『グーグルGoogle 既存のビジネスを破壊する』(文春新書)、『検索エンジンがとびっきりの客を連れてきた!』(ソフトバンククリエイティブ)、『ウェブ2.0は夢か現実か?』(宝島社)、『ネットvs.リアルの衝突―誰がウェブ2.0を制するか』(文芸春秋)など。


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