オフィスのペーパーレス化とフリーアドレス化を行ったGDOでは、紙文書を保管する書庫などモノを大幅に減らした。そうして広くなったオフィス空間を、社員同士のコミュニケーションスペースとして活用している。
オフィス内に個人の固定席を設けず、自由な席次で働くフリーアドレス制。以前、総務特集内で同制度導入の成功例に、ゴルフダイジェスト・オンライン(以下GDO)を紹介した。フリーアドレス成功の影に、ペーパーレスがあったのだ。
GDOでは、本社オフィスの移転に伴い、足かけ2年でペーパーレスとフリーアドレス制の同時導入を行った。2つは両輪だ。
というのはフリーアドレス制にすると自席がなくなる。つまり、それまで自分の机周りにしまっておけた紙文書の保管場所がなくなってしまう。これらの文書を電子化し、自分のPC内で文書管理せざるを得ないからだ。
電子化する際は、業務パフォーマンスが落ちないよう配慮が必要だという。GDOでは紙文書を電子化に使う高速スキャナの導入や、社内無線LANの整備とそれに伴うファイルサーバの大容量化、打ち合わせ用に使うプロジェクタやホワイトボードの充実化を図った。
こうして電子化とフリーアドレス化を推し進めた結果、導入前に比べて印刷に関する経費は65%、全体の経費は20%、それぞれ削減できたという。ただ、コスト削減だけがペーパーレスのメリットではなかった。
「当社の考えるペーパーレスとは、ペーパー“ストック”レス」。社長室の曽我一郎さんはそう話す。限られたオフィス空間での業務パフォーマンスを上げるため、保存すべき文書以外は一切ストックしておかないという考え方だ。かといって「紙文書は悪」といった単純発想ではないという。法的に必要な文書や、クライアントに渡すプレゼン資料などはもちろん印刷する。
場所に制約を受けないフリーアドレス制の実現は、ペーパーレス化にメリットをもたらした。「フリーアドレス制は導入しなくてもペーパーレス化を行ったと思う」と、曽我さん。ペーパーレス化によるメリットには何があったのだろう。
1つは経費削減だ。電子化の前に比べて印刷に関する経費は65%、全体の経費は20%、それぞれ削減できたという。また、空間の有効活用を可能にした。紙文書の場合、前回解説したように、保管や保存するための書庫が要る。
GDOではペーパーレス化に伴い、個人単位で使うキャビネットを廃止。ペーパーレス前より部署単位で使うキャビネットを80%減らした。これに伴いキャビネット用スペースも大幅に減り、オフィス空間に余裕が生まれた。また、フリーアドレス制により1人1机分の座席スペースを確保しなくてもよくなったことも、空きスペースを作り出した。
キャビネットを減らすことでペーパーレス化を実現。さらにフリーアドレスで机や席を減らせる。そうしてできた広いスペースが、社員の休憩スペースやコミュニケーションの場になる――。
社員が集まるオフィスで、誰もが自然にコミュニケーションできるようになれば、上下関係だけではないフラットなコミュニケーションが生まれるのではないだろうか。
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