会社の方針がはっきりしなくても――部下が喜ぶストーリーで方針を伝える方法人を動かす話し方講座(2/2 ページ)

» 2009年06月23日 14時00分 公開
[水野浩志,Business Media 誠]
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テクニック:方針を伝えるポイントはストーリー作り

 では、どのようにその方針を伝えればいいのでしょうか。管理職研修、特に中高年の方を対象にしたとき、彼らが口にする「会社の方針」の伝達方法を聞いていると、

  • 部下のメンタリティを無視して伝えようとする

 人が多いように思います。「会社には行ったら会社のために働くものだ」「給料は我慢料なのだから、黙って言うことを聞け」なんて物言いで、素直に「はい、分かりました」という人であればなんの問題もないわけですが、今の20代30代の人達は、きっとそんな人は多くないでしょうね。

 だったら、きちんと彼らにもメリットのあることを伝え、それが会社にもメリットとなるように伝えてあげることが、これからの上司の役割の1つになるのはずです。そのときに重要なポイントは、

  • 方針を伝えるときは、部下達が喜ぶストーリーを作ってあげる

 こと。このときのストーリーを作る考え方のポイントは大きく2つあります。

 1つは「今より楽しく喜びがある未来を作る」というもの。例えば、成長志向の強い人間であれば、

 「今の君はこういう状態だけれども、そこにこういった能力が身につくことによって、仕事の幅がこう広がり、成果もこのように生み出せるようになる。すると君自身の評価も上がるだろうし、その能力は自分以外の誰のものでもないのだから、君はどこに行っても通用する人間になるよ」

 と伝えると、彼らはモチベーションが上がり、会社の方針が不明確であったとしても、当面は自分が取り組むべきものに集中することができるでしょう。

 しかし、組織には、みんなそのような成長志向の強い、やる気のある人間たちばかりではありませんよね。そんな人たちに対しては「今よりつらくない、楽になる未来を作る」ということが有効かもしれません。例えば、いつも上司に怒られてばかりいる成長意欲の低い人に対しては、

 「君はさ、この部分の能力をもう少し身に付けることができたら、きっと上司の説教も半分くらいは減ると思うよ。そうすれば今よりはストレスも減るだろうし、気持ちも楽になるだろうからさ、ちょっと勉強してみたら?」

 と、現状のつらい話である、上司に怒られる大変さを解消できるよ、というアプローチで、成長の方針をみせてあげると「今より楽になれるんだったら」という気持ちで行動を起こすかもしれません。

 いずれにしても、これだけ混沌としているこのご時世、先の見通しは見えない方が当たり前なのかもしれません。ですから、具体的な方針が見えない今だからこそ、この先どうなっても大丈夫なように、ビジネスパーソンとしての足腰を鍛えるチャンスなのだと思います。

 そのためには、部下よりも何よりも、まずは自分自身に、成長のストーリーを組み立ててあげ、それを自分に語ってあげてください。

著者紹介 水野浩志(みずの・ひろし)

 マイルストーン代表取締役。「社会に活き活きと働く大人たちを生み出す」をスローガンに掲げ、リーダーシップやモチベーション創造、自己表現力養成をテーマにした企業研修や公開セミナーを実施。また研修・セミナー講師向けに、具体的な成果を生み出す効果的なカリキュラムの構築手法や講師としてのマインド、人間力創りの指導も行っている。現在、日刊(平日)で、メールマガジン「1回3分でレベルアップ! 相手の心を掴むトーク術」を発行中。


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