3D元年に思う“スター・ウォーズ”の実現性樋口健夫の「笑うアイデア、動かす発想」

2010年は3D元年――。映画「アバター」などのコンテンツをはじめ、パナソニックやソニーも相次いで大型3Dテレビを発表するなどハードウェアも出そろいつつある。ただ、現在のところ実用段階にあるのは3D用の専用メガネを着用しなければいけないのが難点だ。この「メガネ3D」以外の方式に注目してみた。

» 2010年05月14日 11時50分 公開
[樋口健夫,Business Media 誠]

 2010年は3D元年――。映画「アバター」などのコンテンツをはじめ、パナソニックやソニーも相次いで大型3Dテレビを発表するなどハードウェアも出そろいつつある。ただ、現在のところ実用段階にあるのは3D用の専用メガネを着用して観る必要があり、わたしはこれを「メガネ3D」と呼んでいる。

 メガネ3Dとは異なる方式にも注目している。それはパイオニアのフローティングビジョン「FV-01」である。これが面白い。まずはNASAのハッブル宇宙望遠鏡による星雲の画像だ。

 ご存じだろうか、1977年に公開した「スター・ウォーズ・エピソード4」で、光の中に浮かび上がった立体画像のレイア姫が「助けて、オビ=ワン・ケノービ、助けて」というように訴えていたのを。リアルタイムで見たわたしは当時、「これが未来の技術だ」と無邪気に感動していた。

 いつしか遠い未来、あのような立体画像の再生が実現するのだろうかと思っていたが、それに近いものをパイオニアがとうとう実現したのだ。フローティング(浮遊)画像とは、専用の3D用レンズの効果により、液晶に表示した2D映像を手前の空間に立体画像として写したもの。空中で焦点を結ぶ実像であるため、ほかの立体表示方式と比べて見やすく、専用メガネも不要なのが特徴だ。3D用レンズは細かい多数のレンズ板を組み合わせたもので、書いてしまえば仕組みは簡単だが、実用に足るクリアな浮遊画像を実現させるのは簡単ではなかっただろう。

 そしてわたしはついにビックカメラでFV-01を購入。接続したPCのデータ(JPG画像やムービーファイル)を空中に映し出してひとしりき感慨にひたった。だが使っているうちに気になる点も出てきた。問題は視野角がまだ狭いことだ。それと、簡単なコンテンツを同梱してはいるが、やはり面白いコンテンツが少ないことだろう。

 一方、FV-01が赤外線センサーを内蔵しているのは、今後の応用が期待できる。浮遊映像に触れようとすると、赤外線センサーが反応し映像を変化させることができるのだ。わたしの場合、アイデアマラソンのセミナーに活用しようと考えている。セミナー冒頭でわたし自身の浮遊像によるプレゼンを見せる予定である。セミナーの受付に設置して、あいさつさせるのもいいかもしれない。

FV-01

 パイオニアが、このフローティングビジョンを発売することを認めたのは、ディスプレイ装置のあり方に大きく影響を与えるものになるからだろう。空中に浮遊する画像というと特殊な感じがするが、3D画像なのでなんと言っても分かりやすい。「フローティンググラフィック」という表示の分野を創出するかもしれない。

 一番簡単な活用方法は、スーパーマーケットなどで商品を説明させることだ。浮遊画像に触れるセンサーが反応して、詳細な説明が始まるのである。会社の受け付けや美術館の解説用途も考えられる。展示品の参照資料を3D動画で見ながら理解できるというわけだ。学校で利用すれば、貴重な資料などを学生達に擬似的に見せることも可能である。

 「いずれは学校の給食も3D画像で……」なんて心配は杞憂だろうが、そんな心配が必要になるぐらい3D動画が広まってくれると、スター・ウォーズでドキドキした世代としては大変うれしい。

今回の教訓

 3D画像の方が本物よりいい――ということになるかも。


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著者紹介 樋口健夫(ひぐち・たけお)

 1946年京都生まれ。大阪外大英語卒、三井物産入社。ナイジェリア(ヨルバ族名誉酋長に就任)、サウジアラビア、ベトナム駐在を経て、ネパール王国・カトマンドゥ事務所長を務め、2004年8月に三井物産を定年退職。在職中にアイデアマラソン発想法を考案。現在ノート数338冊、発想数26万3000個。現在、アイデアマラソン研究所長、大阪工業大学、筑波大学、電気通信大学、三重大学にて非常勤講師を務める。企業人材研修、全国小学校にネット利用のアイデアマラソンを提案中。著書に「金のアイデアを生む方法」(成美堂文庫)、「マラソンシステム」(日経BP社)、「稼ぐ人になるアイデアマラソン仕事術」(日科技連出版社)など。アイデアマラソンは、英語、タイ語、中国語、ヒンディ語、韓国語にて出版。「感動する科学体験100〜世界の不思議を楽しもう〜」(技術評論社)も監修した。近著は「仕事ができる人のアイデアマラソン企画術」(ソニーマガジンズ)「アイデアマラソン・スターター・キットfor airpen」といったグッズにも結実している。アイデアマラソンの公式サイトはこちらアイデアマラソン研究所はこちら



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