ほったらかしが「新・ぶら下がり社員」を生む「新・ぶら下がり社員」症候群(2/2 ページ)

» 2011年01月27日 11時45分 公開
[吉田実,Business Media 誠]
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新・ぶら下がり社員の見抜き方

 新・ぶら下がり社員が増えたとはいえ、ぶら下がらずにしっかりとした目的・目標を持ち、生き生きと働く社員もいる。前述したように、新・ぶら下がり社員はとりあえず上司の指示には従うし、与えられた仕事はきちんとこなすので、見抜くのは容易ではない。

 新・ぶら下がり社員を見抜くには、次のような兆候に注意するべきである。

新・ぶら下がり社員チェックポイント

  • 覇気がない
  • 言い訳ばかり口にする
  • マネジメントする立場になるのを嫌がる
  • 会社全体の方針や事業戦略の話になると興味を示さなくなる
  • 人から言われた仕事しかしない
  • 人と違う行動を取るのを極端に嫌がる
  • 失敗やリスクを極端に恐れる
  • 会議やミーティングでまったく発言しない
  • 部下・後輩を育成しようとしない
  • 会社批判ばかりをする

 あてはまる項目が多ければ多いほど、ぶら下がり度も高いと考えられる。

 「今、ほかの仕事で手一杯で、そこまで手が回りません」

 「自分なりにやってはいるんですけど、先方が納得してくれなくて」

 「これからやろうと思っていたところです」

 「魅力的な商品がうちにはないから売れない」

 「売れないのは不景気だから」

 このように、いつも何かのせいにして言い訳ばかりするようになったら、新・ぶら下がり社員に染まりつつある。口ぐせは「そうですね、でも」「分かってはいるんですけど」という感じで、否定形から入るのである。

 30歳前後を対象とした育成プログラムでも、グループで話し合ってもらうと、建設的な意見がいろいろ出てくる。けれども、すぐに「でもさ、それって」と打ち消す意見が飛び出すのである。否定するのが習慣化してしまっているのだろう。

 ぶら下がり度は普段の態度をよく観察していれば分かるが、分かりやすいのは会議やミーティングの席での態度である。

 「何か意見は?」「質問は?」と聞かれても、黙り込んでいる。指名したら意見は述べるが、自分から手を挙げて発言しようとしないのである。

 終始うつむき加減で何も反応せず、話を聞いているのか聞いていないのか分からない新・ぶら下がり社員に向かって話すのは珍しい光景ではなくなった。

 ここまで覇気がなければ、普段の仕事ぶりも大体予想はつく。積極的に情報を仕入れて仕事に生かそうとしないだろうし、異業種交流などに出かけて人脈を広げようともしない。社内で小さく小さくまとまり、「おとなしく言われたとおりに座っています、30歳」という感じだろう。

 小さな兆候でも、放置していたら悪化する。

 私は新・ぶら下がり社員が5年後や10年後に自然とやる気を出し、リーダーとしての自覚も生まれ、チームをグイグイ引っ張っていく存在になるとは思えない。

 「そのうち元気になるだろう」と問題を先送りするのではなく、今すぐにでも対処するべきである。

集中連載『「新・ぶら下がり社員」症候群』について

『「新・ぶら下がり社員」症候群』 『「新・ぶら下がり社員」症候群』(吉田実・著、東洋経済新報社・1月末刊、本体1575円)

 辞めません。でも、頑張りません。会社を辞める気はない。でも、会社のために貢献するつもりもない。そんな30歳前後の社員が増えている。彼らのことを「新・ぶらさがり社員」と呼ぶ。

 新・ぶらさがり社員は目的を持たない。目的がないゆえに、会社では時間を「潰す」ことに明け暮れ、常に70%の力で仕事に取り組む。本書では、彼らのマインド低下を表すデータを豊富に紹介している。その一部を紹介しよう。

 「周囲の人に主体的に関われている」(社会人1〜3年目:8.4%、社会人7〜9年目:4.5%)、「重要な業務を担っていると思う」(社会人1〜3年目:10.3%、社会人7〜9年目:8.4%)、「仕事で自分らしさを発揮できている」(社会人1〜3年目:9.7%、社会人7〜9年目:5.8%)。

 新人よりも仕事ができないと思いこんでいるのは、いったいなぜなのだろうか?

 本書では、企業研修の講師として6000人以上の人材育成を手がけてきた筆者が新・ぶらさがり社員の実態に迫るとともに、30歳社員の「目の色」を変えてやる気にさせる方法を詳しく解説する。


目次

  • 第1章 急増する「新・ぶら下がり社員」
  • 第2章 なぜ若者は「頑張れない」のか?
  • 第3章 新・ぶら下がり社員の「目の色」を変える処方箋
  • 第4章 新・ぶら下がり社員を増やすひと言、減らすひと言

著者プロフィール:吉田実(よしだ・みのる)

株式会社シェイク代表取締役社長。大阪大学基礎工学部卒業後、住友商事株式会社に入社。通信・放送局向けコンサルティング、設備機器の輸入販売を担当。新事業の立ち上げなどにもかかわる。2003年、創業者森田英一の想いに共感し、株式会社シェイクに入社。営業統括責任者として、大手企業を中心に営業を展開する。2009年9月より現職。

現在は、代表取締役として経営に携わるとともに、新入社員からマネジャー育成プログラムまで、ファシリテーターとして幅広く活躍する。ファシリテートは年間100回を数え、育成に携わった人数は6000人に上る


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