良い質問はあなたのキャリアや組織、ビジネスを前進させます。米誌『ザ・ニューヨーカー』などに記事を書いていたジャーナリストのEvan Ratliff氏に「質疑応答」のノウハウを聞きました。
優れた「洞察」はあなたのキャリアや組織、ビジネスを前進させます。そして、正しく質問するスキルこそが洞察を得る鍵となります。ところが、大半の人は質問をするのがすごく下手です。ここでは、正しい質問の仕方を専門家から学ぶことにしましょう。
もしあなたが、ウォルター・クロンカイト(米国の著名なニュースキャスター)みたいなインタビューができたとしたら、会議をより有益なものにできるでしょうか? メンターたちからより価値を引き出すことができるでしょうか? エレベーターで重役と鉢合わせたり、カンファレンスで業界の有名人と出会ったりしたときに、そのチャンスを実りあるものにできるでしょうか?
答えは「イエス」です。
メディア企業「The Atavist」を創業する以前には、米誌『ザ・ニューヨーカー』などに記事を書いていたジャーナリストのEvan Ratliff氏はこう言っています。
個人的にフリーランスで仕事を進める以外には、ビジネス経験が乏しい私を本当に助けてくれたのはジャーナリスト時代に培ったスキルでした。中でも役に立ったスキルは、「アドバイザーやクライアント含め、あらゆる相手から、価値ある回答を引き出せる質問スキル」でした。
良い質問はあなたのキャリアや組織、ビジネスを前進させます。また、会話をより価値あるものにし、たくさんの洞察を生み出します。「ジャーナリストから学べるスキル(英文)」のうち、一番役に立つものは、熟練した「質疑応答」のスキルなのです。
問題は、多くの人がひどい質問ばかりすることです。私たちはベラベラしゃべり過ぎる上に、悪い回答で満足してしまいます。単刀直入に尋ねることをためらったり、自分の無知がバレるのを恐れてスローボールばかりを投げたりします。そして、自ら成長の機会を逃しているのです。
そんなことをする必要はありません。
以下に、あなたを優れた質問者にするアドバイスがあります。
ナーバスになっている質問者は、とりとめなくしゃべり続ける傾向があります。また、質問をするときも単刀直入に聞く代わりに、相手に安易な選択肢を与えてしまいます。例えば次のような感じです。
「良いプログラマーを見つけるコツはなんですか? Monsterで探しますか? LinkedInを利用するとか? 知人に尋ねる? それから、えーと……例えば……あ、そうだ、何か他に良い求人サイトを知っていますか?」
あなたは質問をしたいはず。なぜしゃべり過ぎてしまうのでしょうか? シンプルに疑問をぶつければいいのです。短い質問文で構いません。
沈黙に耐えることを学んでください。相手に考える時間を与えること。安易な選択肢を与えてしまわないこと。あなたがしゃべり続けていては、回答は得られません。あなたから回答を与えてしまっては、相手から何も学ぶことはできません。
Who、What、Where、When、How、Why、で始まる質問は、思慮深い回答を引き出せます。一方、Would、Should、is、are、Do you thinkで始まる質問は、回答の幅を制限してしまいます(もちろん、回答をイエスかノーで答えさせたい場合はそうしてください。そうではなく、アドバイスや物語を求めている場合は、オープンエンドな質問をすることです)。
「Do you think」から始まる悪い質問でも「What」を付け加えればオープンエンドの質問に変えることができます。とはいえ、できるだけ5W(1H)で始まる質問をする訓練をしてください。
「本当に最悪な質問は、ある決まった回答を引き出すために『誘導』をすることです」と、米誌『ワイアード』や『ニューヨークタイムズ』に記事を書くベテラン・ジャーナリストのClive Thompson氏は言っています。絶対に誘導質問はしないでください。
そもそも、答えを既に知っているならなぜ質問するのでしょうか?
もし自分の考えを確認したいだけなら、客観的、かつ直接的に質問すればいいのです。その方が自信があるように見え、より誠実な回答を得られます。
「分かったフリをして相づちを打ち続けるよりも、正しい質問をするために会話を遮る方がずっとましだ」とRatliff氏は言っています。
良いジャーナリストは必要なときに質問を差し挟みながら会話を進める術を知っています。良い質問は、会話が脱線してしまう前に軌道修正を行い、質疑をよりクリアにします。ラリー・キングやジョン・スチュワートのような偉大なインタビュアーが、どのように会話をコントロールするかに注目してみてください。彼らはよく、丁寧な態度で会話を遮り質問を差し挟みます。自分の意見を主張するためではなく、質疑を軌道に戻すためにです。
成熟した人々は、会話を軌道に戻すために質問を差し挟んだとしても気分を害したりはしません。反対に、的確な質問は「きちんと話を聞いている」印象を与えます。
ジャーナリストをしていると、企業の広報係や百戦錬磨のビジネスパーソンをインタビューすることもよくあります。彼らから率直な回答を引き出すのは至難のワザです。うまく質問をかわされることも多々あります。こちらの質問には答えてもらえず、かわりに無関係な話を長々と聞かされたりします(きっとあなたは何を質問したのかさえ忘れてしまうでしょう)。
質問をはぐらかされそうになった時は、ダイレクトな質問をぶつけるか(「ところで、月に何ドルのコストが掛かっていますか?」)、質疑の後半に少し角度を変えて同じ質問をしてみます。必要な情報を引き出すためにはさまざまな角度から質問を投げかける必要があります。あなたが誠実な態度でいる限り、同じテーマで繰り返し質問したとしても、悪い印象は与えません。
もし、回答があいまいだったり、複雑すぎると感じたりした場合は、自分の言葉で言い換えて投げ返してみます(「つまり、あなたが開発したソフトウェアは、業界の重要ニュースを自動でメールしてくれるわけですね?」)。
そうすれば、「その通り」と言ってもらえるか、より詳しい情報を付け加えながら訂正してもらえるでしょう。いずれにせよ、相手の意図をより明確にすることができます。
中には、相手を煽ってミスを誘うために、またはうそを見抜くために、わざと相手の回答を取り違えて投げ返す人もいます(ただし、この戦術を採用する時は自己責任で)。
最悪の質問とは、「質問しないこと」です。
Ratliff氏は「知らないのに知っているフリをするのは何の意味もありません」と言います。「記者のゴールは情報を集めることであり、自分の主観を押し付けることではありません。これはあらゆるケースに当てはまります」
人は思っているよりずっと親切です。
「起業家たちからの質問で気分を害されることはありません」と、カンファレンスでよく起業家たちに囲まれるUnion Square Ventures社の共同経営者Fred Wilson氏は言います。「彼らはみんな一生懸命なのです。私はただ、最善の回答をしたいと思うだけです」。
時には悪い質問をしてしまうこともあります。それでOK。誰だってそうなのです。伝説のビジネス思想家、セス・ゴードン氏は、「良い質問をするにはどうしたらいいでしょうか?」という私の質問にこう答えています。「その質問にうまく答えられるか自信がないですね!」
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