他人の心は変えられない――この真理に気が付かずに、果てしないストレス地獄に苛まれている親や教師や上司や販売員がいかに多いことか。変えられないものは放置して、変えられるものから手をつけるほうが現実的です。
部下の仕事の9割は、聞かれたことに正しく答えることです。ビジネスにおける答え方には「こう聞かれたら、こう答える」という決まった型があります。「打てば響く部下」と思われるために必要な「受け答え」の技術を大手予備校で現代文、小論文を指導する「国語のプロ」が伝授します。
この記事は2013年6月14日に発売された中経出版の『仕事に必要なのは、「話し方」より「答え方」』(鈴木鋭智著)から抜粋、再編集したものです。
インターネット上の人間関係は難しいものです。家族に見せる顔、会社で見せる顔、友人に見せる顔、人はそれぞれ異なる舞台では異なる顔を使い分けているものですが、SNSではそれらがごちゃ混ぜになりがちです。友人に向けて書いた愚痴なのに上司に「いいね!」を押されてしまったり、付き合いのコメント返しに時間を奪われてしまったり。
この辺りのデメリットは使い手の問題でしょうか? それともシステムの問題?
つまり、どういうこと?
× 顔の見えないネットだから、自己中心的な人が増えてしまう。「無言の申請を受け取った人がどう思うか」という他人の気持ちへの配慮が欠けている。意識の高いユーザーが中心となって「メッセージを添えよう」キャンペーンを行い、初心者ユーザーを啓発しよう。
○ そもそもフレンド申請のボタンとメッセージ送信のボタンが別々という仕様に問題がある。2回も画面を開くのは誰だって面倒だ。メッセージとフレンド申請のボタンを1つの画面にまとめればいいのに。
確かに「自己中心的」で「配慮が欠けている」人が多いのかもしれませんが、これらの「心掛け」を原因にしている限り、問題は解決しません。目に見えない「心」は変えられないからです。
振り向いてくれない相手に「好きになって」と迫っても、相手の気持ちは変わりません。買う気のないお客様に「欲しくなれ、欲しくなれ」と念力を送っても無駄です。やる気のない営業マンに「やる気を出せ」と怒鳴っても、ますますやる気がなくなるだけです。
他人の心は変えられない。この真理に気が付かずに、果てしないストレス地獄に苛まれている親や教師や上司や販売員がいかに多いことか。
変えられないものは放置して、変えられるものから手をつけるほうが現実的です。
原因分析=心掛けではなく仕組み
仕組みとは、モノのデザインや機能、社会のルールや手続きのこと。
部屋が散らかるのは「だらしないから」ではなく、「収納場所を決める前にモノを買ってくるから」。働けるのに生活保護をもらう人がいるのは「性格が卑しいから」ではなく、「損得勘定すると給料より生活保護費のほうが多いから」。ハンコを押すといつも曲がってしまうのは「心が曲がっているから」ではなく、「印章の側面の溝が手前側ではなく見えない向こう側に彫ってあるから」。
説教や罰則で改善しようとするより、仕組みを変えるほうが簡単です。
× クリーンなイメージで市民をだまし、市政を私物化するとは人間として最低だ。そして有権者にも人間を見る目がない。心から市民のことを思い、公平公正な政治のできる人物にいまこそ立ち上がってもらいたい。
○ もともとは清廉潔白な人物であっても、選挙のときに特定の企業や団体の支援を受けたら、しがらみが生じて便宜を図らなければならなくなってしまう。選挙にお金がかかりすぎて、組織の支援なしに自腹で戦うことが難しい現在の選挙制度に問題がある。
1人だけなら個人の心の問題かもしれませんが、2人続いたら仕組みの問題です。「2度あることは3度ある」のは、仕組みを放置しているからなのです。
孔子やキリストのような聖人君子が現れるのを待つよりも、選挙制度を改革したほうが手っ取り早いのではないでしょうか。
今回のまとめ:原因分析=心掛けではなく仕組み
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