相手の身になって考えることができて、それを言動に示すことができる人。それも「伝わる話し方」ができる人の必須条件だ。
人は誰でもプライドがあるから「こんなことも知らないのか」「えっ、分からない?」などというのは、嫌われるタイプの頭の悪い言い方となる。
相手のほうが明らかに「知識がある」というとき、同じ社内だったり、ライバル、部下などなら誰でも“ひけ目”や“コンプレックス”を感じている。その上、知識をひけらかすようなことを言われたら、その相手は「イヤな奴」と思うものだ。
私もときどき合同の研修や講演があるが、なかには「知識をひけらかす」レベルの低い人に出会うことがある。専門用語を乱発して、少しでも相手が知らないとみると“上から”ものをいう言い方をする。あなたは、こんな嫌われる人になってはいけない。
スマートに相手のことを思いやれてこそ、自分の「知性」も相手に感じさせることができるのだ。
もしも「相手に分かるかな?」という難しい内容を話そうとするとき、どうすれば相手のプライドを傷つけることなく話せるだろうか?
「こんなことも知らないのか!」という言い回しは嫌われる。だから、この逆をやったらいい。つまり、もうすでに「相手は知っている」ということで話を進めていけばよい。
言い回しはこうだ。「ご存知のように」をつけて話し始めるだけでいい。どんなに知らないことでも「ご存知のように」と言われると、たいていの人は「いいえ、知りません」などとは言えないものだ。相手が知らない状態で「ご存知のように」と付けると、相手は集中して聞かざるを得ない状態になる。そこではじめて「ご存知」のはずの中身を口にする。
もちろん、聞きはじめは知らなかったとしても、あなたの話を聞けば「分かる」。つまり、すでに知っていたフリができる。これが、相手のプライドを傷つけない賢いやり方になる。
私は多人数の講演や研修でも、「ちょっと難しくなるな」という内容のときにはこのように言うようにしている。
「すでに知っている人も多いと思いますが」
「ご存知の人は、確認の意味で……」
「ご承知のように……」
という形で、やはりすでに知っている人は多いでしょうが、と言うようにして、プライドをくすぐるのである。
ここが微妙で「分からないようだから教えましょう」というような姿勢で話すと、相手のプライドは傷つくし、スマートなやり方ではない。例えば、
「今の目の動きから心の状態を見るのはNLP理論から持ってきています。ご存知の人も多いように、NLPというのは神経言語プログラミング、Neuro Linguistic Programmingの頭文字を取って……」
誰も知らなかったとしても「ご存知のように」を付けて専門用語に触れたなら、「こいつは賢い」「スマートだ」と頭がいい人にまでも思われるのである。
ちなみに「ご存知のように」「ご承知の人は多いでしょうが」といったひと言を付けたあとには、聴衆の“うなずき”は大きくなるものだ。
やはり人はプライドがあるから「知らない」とは思われたくない。そこのツボを分かっていないと、聞く耳を持ってもらうことは難しい。
とはいえ、あまりに難解なことは「ご存知のように」とやるとイヤ味に聞こえることもある。この場合は、
「私も先日はじめて知ったのですが……」
「この間、たまたま目にした雑誌に……」
というように、自分もついこの間知ったという言い方がベストな場合もあることをつけ加えておこう。
(次回は、「考えているフリが重要」について)
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