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» 2018年10月29日 08時00分 公開

『Dr.スランプ』で「マシリト」と呼ばれた男・鳥嶋和彦の仕事哲学【中編】:『ジャンプ』伝説の編集長は『ドラゴンボール』をいかにして生み出したのか (4/6)

[今野大一,ITmedia]

作家は友達じゃない

――漫画家と作品を作り上げるのは根気のいる作業かと思いますが、鳥嶋さんは何を心掛けていらっしゃいましたか? 私も編集者の端くれですが、なかなか苦言を呈すのは難しいといつも思っています。

 気持ちは分かりますが、作家に対して意見することから逃げると、作品が終わってしまいます。だから緊張するかもしれないですが、言いにくいことでもきちんと伝えなければならないのです。

 漫画家は連載を続けることができなければ、フリーターになってしまいます。お金を稼げなくなるのです。だから編集者は、作家に面白い漫画を描く力を付けさせ、読者に届けられる作品に磨かないといけない。友達ではないのです。好かれる必要はありません。

――伸びる漫画家と伸びない漫画家にはどんな違いがあるのですか?

 こちらのフィードバックを聞いて、「修正」ができるかできないかです。素直に話が聞けるかどうかでしょう。読者に伝わるためには分かりやすさが必要です。先ほど申し上げた通り「読みやすい漫画」でなければ手が止まってしまうからです。漫画の吹き出しは「7字×3行」ほどの話し言葉で、やりとりをしています。その会話を絵と一緒に展開しているので、読者は読むんじゃなくて「見る」のです。だから相当なスピードで読み進められるものであるはずなのです。

phot 鳥嶋さんは「作家に好かれる必要はない。言いにくいことでもきちんと伝えなければならない」と教えてくれた

人気が下がったドラゴンボールの「転機」

――ドラゴンボールを進める上での「転機」はどこにあったのですか?

 あるとき、読者アンケートの順位がどんどん下がるという現象が起きていました。どうしてなのかを鳥山さんと話して分析した結果、「悟空にキャラクターとしての魅力がない」という結論が出たのです。鳥山さんと議論して分かったのは、悟空は「強くなりたい」というキャラクターだということ。だからそのキャラクターを際立たせるために、師匠である亀仙人と、修行仲間のクリリン以外のキャラクターを、全部捨てることにしました。

 この3人だけに絞り、ともに修行に励ませることで作品のテーマを明快にしたのです。ただ、あまりに修行の期間を長くしては子どもが飽きる可能性があるので、「天下一武道会」という舞台を設定しました。天下一武道会を目標に修行をして、悟空がどのくらい強くなったのかを成果で見せたら、一気に人気が上がったのです。

――作品作りにも、どこかで原点に立ち返ることが必要なのですね。

 人気が下がるということは、読者から評価されていないことを意味するので対策が必要です。

phot 亀仙人とクリリン以外のキャラクターを捨てることによって悟空のキャラクターを明快にした

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