宿題もなく、クラス担任もなく、中間・期末試験もない――。学校の「当たり前」を見直し、メディアや教育関係者、保護者などから注目されている公立中学校が東京都にある。千代田区立麹町中学校だ。
なぜこのような大胆な改革を進めているのだろうか。麹町中学の校長である工藤勇一氏に、3回に分けてその真意を語ってもらった。記事の前編(なぜ宿題は「無駄」なのか?――“当たり前”を見直した公立中学校長の挑戦)では宿題を廃止した理由を、中編(公立中学校長が定期考査を「全廃」した理由――成績を“ある時点”で確定させることに意味はない)では定期考査を廃止した背景をそれぞれ語ってもらったが、最終回の今回は学級担任を廃止した理由に迫る――。
見直ししたものの3つ目は、1クラス1担任による固定担任制です。
本校では、2018年度から学級担任を固定せず、学年の全教員で学年の全生徒を見る「全員担任制」を採用しています。
一人ひとりの教員にはそれぞれ得意分野があります。それを生かすことが、生徒にとって大きな価値につながっていきます。生徒のサインを読み取るのが得意な教員、保護者対応が得意な教員、ICTの活用に長けた教員、さまざまな個性を生かし合うことができる学年運営に変える。それが全員担任制です。
参考にしたのは、「チーム医療」の考え方です。患者にとって、最も適切な医療を行うために、心のケアや、専門性の高い処置を行う病院の取り組みは、学校に置き換えると、全ての子どもに最善の手だてを、学校全体で取るという姿になります。
これまでの固定担任制には、さまざまな弊害が見られます。
例えば、生徒の全てを1人の担任に委ねることになってしまいがちなため、固定担任制では、子どもたちや保護者にとっての学級のよし悪しは、多くの場合、担任にひもづけられる傾向があります。学級の中で問題が起きれば、子どもたちや保護者は安易に担任のせいにしたり、また担任の方も自分で問題を抱えこんでしまったりする状況が生まれていきます。
今は、学習面から生活面に至るまで、手取り足取り手厚く面倒を見ることがよいものとされ、昨今では、「丁寧な指導」「面倒見の良さ」をセールスポイントにする学校や教育委員会も少なくありません。しかし、大人が先回りをして、手を掛けすぎて育てられた子どもの多くは、自律できなくなっていきます。そして、自分では解決できない問題やトラブルに直面すると、うまくいかない原因を自分以外の周りに求め、安易に他人のせいにしてしまう傾向があるように思います。
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