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「おまえの家族皆殺し」――“極限のパワハラ・セクハラ”にどう立ち向かうかブラック企業から自分を守れ!(4/5 ページ)

» 2019年05月28日 05時00分 公開
[溝上憲文ITmedia]

「第三者からのセクハラ」も禁止

 今回の法改正では従来のセクシュアルハラスメント(セクハラ)規制も強化される。セクハラやマタニティハラスメント(マタハラ)はすでに「男女雇用機会均等法」にパワハラと同じように事業主に雇用管理上必要な防止措置を義務付ける規定がある。だが、全国の都道府県労働局に寄せられたセクハラ相談件数は約7000件(17年度)に上る。

 男女雇用機会均等法の関連では昇進・採用などの性差別を超えて最も多くなっている。にもかかわらず一向に減らないのは会社の規制が緩いからだ。

 また、セクハラ事案は潜在的にはもっと多いと思われるが、会社の窓口に相談すると昇進や上司の評価などの処遇に影響することを恐れて泣き寝入りしている人もいるだろう。そこで今回の法改正では事業主に「セクハラ問題の相談を行ったことを理由とする解雇その他の不利益な取扱いを禁止する」ことが法律に明記された。同じようにセクハラの事実関係の確認に協力したことを理由とする不利益な取扱いも禁止される。

 ところで、セクハラ行為は自分の会社や職場だけで受けるわけではない。社外の取引先や顧客から受ける場合もあるだろう。じつは社外の第三者からのセクハラも禁止されているのだ。厚労省の通達では第三者から受けるセクハラも事業主の防止措置義務に入っているが、このことを知らない経営者も多い。そのため「第三者のセクハラ」を法律の指針に盛り込み、政府は周知・啓発活動をしていくことにしている。

 今回の法改正でパワハラに初めて規制の網がかけられ、セクハラ規制が強化された。このことで世の中の関心が高まり、少しでも改善されることを期待したい。

 だが、日本ではパワハラ、セクハラを含めたハラスメント対策では世界の動きとは完全に遅れているのだ。例えばセクハラ禁止といえば、セクハラ行為をした本人に何らかの処罰を下すのが当たり前だが、日本では事業主の防止義務があるだけで、法的には行為者本人は処罰されない(会社による処分のみ)。つまり、行為者を罰する規定がないのだ。

phot 日本では事業主の防止義務があるだけで、セクハラをした行為者本人を罰する規定がない(写真提供:ゲッティイメージズ)

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