国内の食品ロス(643万トン)のうち、事業系が352万トン、家庭から出るものが291万トンとなっていて、過半が流通段階でのロスであることが分かっている。このため、削減の具体化には、消費者の啓蒙もさることながら、流通段階における商慣習の見直しがクローズアップされている。食品流通においては、賞味期限を1/3ずつに分け、期限の1/3までに納入し、残り1/3を切った商品については返品が可能になるという商慣習がある。
こうしたルールの存在が、食品の廃棄につながってきたという意識から、農水省では食品流通関係者とともに、「食品ロス削減のための商慣習検討ワーキングチーム」を設置して、民間と共同で検討を重ねてきた。現在では、「納品期限の緩和」「賞味期限の年月表示化」「賞味期限の延長」などを推進して改善を図る方向だという。
ただ、こうした商慣習がなぜ存在するのかというと、食品という比較的短い期間で品質劣化する商品は、流通関係者にとってロス発生の可能性が高く、そのリスク負担をメーカー、中間流通、小売で押し付け合う関係にあるという現実が前提となっている。ただ、それは小売において、商品がいつ、どれだけ売れるかということが分からないため、こうした仕組みでリスクを分散しなければ、怖くて商売ができなかったということでもある。
かつて、POSという商品1個単位での販売実績の把握ができるツールが普及するまでの時代、小売店にとって仕入、在庫管理というのは、まさに商人のノウハウの極みであり、その俗人的な能力が、商人としての成功のカギだったといっても過言ではなかった。そこにPOSという精緻な商品販売データが備わることで、小売店は論理的なチェーンストアとしての体裁を整えることができた。熟練商人だけに可能だったリアルタイムでの商品の動向把握が、データにより汎用的なノウハウとなったのである。
これにより、実績を基に売れ筋商品、死に筋商品を把握するという仕組みを構築できた小売業が、在庫ロスを極小化することに成功し、現在のコンビニ大手、ファーストリテイリング、ニトリのような製造小売業に成長していった。しかし、POSによる販売実績把握はあくまでも過去の実績であり、明日からの販売予測精度を高める要素である一方、そのレベルは実際には「相対的に優れている」ものでしかない。売れ残る可能性がある在庫の見切り時期が正確だ、というのが優良小売企業の手法の限界だった。
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