世界レベルのアパレル企業にまで成長したファストリ(ユニクロ)の成功要因も在庫ロスの極小化にあった。食品とは全く異なるジャンルの商品ではあるが、衣料品はファッション性や季節性に左右されるため、一種の「生もの」であり、シーズン中に売り切ることができなければ、ロスの山と化す。こうした本質を理解していたユニクロは、ファッション性の低いカジュアル(下着類を含む)を中心に据え、販売動向をリアルタイムに把握し、ロスになりそうな商品を抽出しては早めの見切り販売によって、ロスを他社に比べて極小化する仕組みを作り上げた。
ただ、こうした仕組みでさえも、消費者の動向を正確に予測することができるレベルではなく、消費者が買ってくれるものだけを品揃えして販売するといった域には程遠い。ファストリでさえも、ビッグデータ分析を用いて、消費者に近づくことを現在も模索中といったところなのだ。
このところフランチャイズオーナーとのトラブルで、世を騒がせているコンビニエンスストア業界も、正にこうした先進的製造小売業である。最近、印象に残っているのは、ファミリーマートが食品ロス削減への取り組みとして実験的に行った、土用の丑の日のうなぎ弁当の完全予約制での販売の結果だ。
完全予約制とした2019年度と、予約と店頭販売を並行した18年度を比較すると、売上は2割減少したものの、利益は7割改善したと公表している。売上は減少しても、利益が向上し食品ロスを削減できるのであれば、どちらのやり方がいいのかは一目瞭然であるし、人口減少高齢化というこの国においては、食品ロスの削減が企業収益の極大化に直結する、という意識改革が必要なことを明確に示している。
24時間営業の必要性の有無、過密出店による加盟店の共食い状況、賞味期限接近に対する値引き販売の禁止、など、コンビニ業界を揺るがすさまざまな問題提起は社会問題ともなり、当局の介入を含めて改善の途を模索中だ。こうした社会情勢を踏まえて、大手コンビニ本部では、賞味期限が接近した商品に対するポイント付与という実質値引き処分の可否を考えるための実験が実施されている。
最終的な結論は現時点では出ていないようだが、売れ残り廃棄の削減につながり、少なくとも加盟店の利益が改善するという結果にはつながっていると報じられている。
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