食品ロス削減推進法スタート 食品ロスは減らせるのか?小売・流通アナリストの視点(5/5 ページ)

» 2019年10月04日 07時45分 公開
[中井彰人ITmedia]
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食品ロス削減への姿勢を示せ

 最近、縁あって株式会社アビー(千葉県流山市)のCAS(CELLS ALIVE SYSTEM)冷凍という冷凍技術を知る機会があった。これまでは急速冷凍時に、水の分子が氷になるとき膨張するため、生鮮物の細胞を破壊してしまうことが、品質劣化の原因となっていた。CAS冷凍は、急速冷凍時に冷凍するものの分子を振動させることによって、氷結時の膨張を抑え、細胞を壊さずに冷凍することができる。

 その効果は、簡単に言えば、解凍して誰でもおいしく生鮮物を食べられるということだ。実際、目の前で水をかけて解凍した生シラスを食べてみたが、獲れたてシラスと変わらない味に驚いた。一例ではあるが、こうした画期的な技術が世に広まっていけば、生鮮品の流通も格段にロスを減らすことが可能なはずだ。

 食品ロスの削減は、これまでは企業収益の追求との両立がうまくいかず、どうしても後回しになってきた食品関連業界の重要な課題だが、やっとロス削減の推進が関係者共通の目標となり得る時代になってきたようだ。生鮮品の品質保持期間が飛躍的に長くなれば、農林水産業で活性化を目指すための技術的な課題や、フードデザート問題(生鮮品を購入できる店が近所にない高齢者の問題)、生鮮品の季節調整問題など多くの問題が解決してしまう可能性がある。 

 食品流通業界は、こうした革命的な技術革新を積極的に導入し、または支援することで、食品ロス削減への姿勢を示すべきだろう。

著者プロフィール

中井彰人(なかい あきひと)

メガバンク調査部門の流通アナリストとして12年、現在は中小企業診断士として独立。地域流通「愛」を貫き、全国各地への出張の日々を経て、モータリゼーションと業態盛衰の関連性に注目した独自の流通理論に到達。


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