こうした問題に詳しい、法政大学の小川孔輔教授の著書『「値づけ」の思考法 買いたくなる価格には必ず理由がある』(日本実業出版社)によれば、コンビニエンスストアの廃棄期限の近づいた商品を値引き販売することによって、売上向上と廃棄ロス削減が見込まれ、加盟店の利益は大幅に改善することが可能である、と説いている。
コンビニエンスストア本部が、これまで値引きを認めなかったのは、売上に対して一定比率でロイヤリティーを賦課するルールだったため、廃棄が増えたとしても加盟店に多く仕入れさせる方が本部の利益が多かったからだ。しかし、本部の利益と加盟店の利益が相反するという状況は、長期的に維持できるものではないし、恐らく値引き容認の方向へ向かわざるを得ないだろう(実験の結果はこれから出るらしい……)。食品ロスの削減≒企業収益の向上という時代は、間違いなく、すぐ近くまで来ている。
ただ、こうした商慣習の是正といった即効性のある改善も大事な一方、食品ロスの発生自体を本源的に少なくすることを可能とする技術革新にも期待したい。これまでにも、冷凍、フリーズドライ、レトルトなど、さまざまな保存技術が生まれ、改良が続けられてきたことで、食品流通はどんどん進化してきた。
その結果、加工食品の分野では、保存技術がかなり進化したのだが、いまでも生鮮食品(青果、鮮魚、精肉)の品質維持は困難なままだ。コンビニエンスストアやドラッグストアなどに生鮮食品をほとんど置いていないのは、「生もの」である生鮮食品は売れ残れば、即ロスになってしまうため、取り扱いを避けているからである。こうした「生もの」の保存が簡単にできるようになれば、生鮮流通の世界が変わるのは間違いない。
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