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話題の「社員PC監視ツール」がテレワークを骨抜きにしてしまう、根本的理由新連載・働き方の「今」を知る(4/4 ページ)

» 2020年05月04日 05時00分 公開
[新田龍ITmedia]
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富士通も、成果主義につまずいた

 また「富士通」の例も有名だろう。同社が管理職を中心に成果主義を導入したのは1993年とかなり早期であった。その後全社員まで制度を広げ、年功序列を全廃している。

 「個々の社員が決めた目標の達成度を半年ごとに上司が5段階評価し、報酬や昇格に反映する」という内容であったが、給与ダウンにつながる失敗を恐れるあまり、長期的な取り組みや高い目標にチャレンジする社員が減り、ヒット商品が生まれなくなったり、自分の目標に関係のない業務対応がおろそかになり、アフターケアなどの場面でトラブルが続出したりするなどの弊害が生まれてしまった。さらには、業績好調な事業所や目立つプロジェクトに属する社員が実質的に有利となり、不公平さを訴える声も上がったようだ。結果的に社員の士気は低下し、業績も悪化したことから、同社では短期的な成果だけを評価することを止めているようだ。

 三井物産も富士通も、「超一流」といっていい企業だろう。それでも、成果主義の導入にはつまずいてしまった。この要因には「日本企業ならでは」なさまざまな要因がある。例えば、日本と成果主義が根付いているとされる諸外国とでは「そもそも」のところで労働市場の構造や雇用慣行が異なっている点が挙げられる。次回の記事では、この点を見てみるとともに、日本でも成果主義を導入して活用している事例を紹介し、成果主義を日本に定着させるための方策を検討していこう。

著者プロフィール・新田龍(にったりょう)

働き方改革総合研究所株式会社 代表取締役/ブラック企業アナリスト

早稲田大学卒業後、複数の上場企業で事業企画、営業管理職、コンサルタント、人事採用担当職などを歴任。2007年、働き方改革総合研究所株式会社設立。労働環境改善による企業価値向上のコンサルティングと、ブラック企業/ブラック社員関連のトラブル解決を手掛ける。またTV、新聞など各種メディアでもコメント。著書に「ワタミの失敗〜『善意の会社』がブラック企業と呼ばれた構造」(KADOKAWA)他多数。


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