野村克也と江本孟紀が語った「日米“プロ野球ビジネス”の決定的な違い」野村克也と江本孟紀『超一流』の仕事術(2/2 ページ)

» 2020年06月19日 13時31分 公開
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巨人戦の全国放送がなくなったビジネス的背景

野村: いや、実はこんなことがあったんだ。56年、メジャー・リーグの代表的捕手であるロイ・キャンパネラ(ブルックリン・ドジャース)に尋ねた。

 「どのような配球が打者に打たれづらいのか?」

 「簡単だ。そのピッチャーの1番いい球を投げさせればいい」

 配球はそういうものではない。メジャー・リーガーのスピードとパワーと技術には到底、太刀打ちできないと感じたが、こと捕手のリードに関しては日本野球のほうが上だと思った。

phot メジャー・リーグの代表的捕手であるロイ・キャンパネラ(ブルックリン・ドジャース)(Wikipediaより)

 64年に26勝を挙げてシーズンMVP、阪神をくだして日本シリーズMVPにも輝いた南海のエース・スタンカ。2ボール0ストライク、もしくは3ボール1ストライク。打者が「ストレートだけを待っている」状況だから変化球のサインを出すと、ことごとく首を振る。

 「ストレートを投げたい。打たれたら仕方がない」

 「野球とベースボール」の違いは、「将棋とポーカー」ほど違うとワシは思っている。将棋は先の先まで読む。対してポーカーは出たとこ勝負。

 捕手の仕事は「1にリード、2に二塁送球、3に打撃」の順番だ。だから『生涯一捕手』のワシは、メジャー・リーグに魅力を感じなかったのだ。息子の団野村は、ワシを監督としてメジャー・リーグに送り込もうと考えていたらしいが……。

「日本初の1億円プレイヤー」

野村: そういえば、「日本初の1億円プレイヤーは落合博満(87年中日)だ」と思っているかたが多いと思うが、実はワシだ。南海のプレーイング・マネジャー時代、選手+監督の年俸で1億円を超えていた。ON(王貞治、長嶋茂雄)より多かったというわけだ。

 まあ、いずれにせよ、日本のプロ野球、もっと魅力的にしないとな。

 ワシが現役のころは、毎日、巨人戦の中継をやっていただろ。パ・リーグはほとんど放送がなかったけど。いまは日本テレビでも巨人戦を映さない。娯楽が多様化して、視聴者が野球以外に流れたということか。

江本: コマーシャルを入れる関係で、野球のように試合時間が確定していないスポーツは、地上波での生中継は難しいです。だから「Pay Per View」と言って見た分だけ料金を支払うCS放送とかケーブルテレビとかに移行しちゃったんです。

 巨人戦の地上波全国放送がなくなったのにはそういう背景がある。その分、地方がにぎわい始めた。野村監督みたいな全国区はいいけど、僕らみたいな端っこにいる解説者は仕事が少なくなっちゃって。

 フジテレビなんて、解説者が20人ぐらいいて、代わりばんこで出ている。だからテレビで地方出張もほとんどない。でも、いまは地方がすごいんですよ。

 札幌、仙台、博多、名古屋、広島。昔ちょっと活躍した選手が、解説者として「大スター」です。広島の山内って思い浮かびますか?

野村: 山内新一か。

江本: (笑)さすがにそれはないでしょう。時代的にも、球団的にも。山内「泰幸」ですよ(広島95年ドラフト1位。新人王)。その泰幸が地方(広島)で大スターです。

phot 野球解説者として活躍している山内泰幸(Wikipediaより)
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